河童のクゥと夏休み
評価:C-
この映画は以前から観るのを愉しみにしていた。だってあの原恵一作品だから。
原恵一が監督した「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲」(01)は第1回日本オタク大賞、キネマ旬報オールタイムベスト・テン〜アニメーション部門第7位、映画雑誌CUTが選ぶ日本のアニメ映画ベスト30で19位、そして「日本のメディア芸術100選」にも選出され、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(02)は文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、毎日映画コンクールアニメーション賞、藤本賞奨励賞などを受賞。しんのすけ役の矢島晶子はインタビューで、「この2作を超える作品は今後しばらく出ないと思う」と発言しているそうだ。僕もこれらの作品に心底惚れ込み、「戦国大合戦」では映画館で滂沱の涙を流したくらいである。
「河童のクゥ」は原恵一が監督のみならず自ら企画・脚本も担当。5年の歳月をかけて完成させたというのだから期待せずにはいられない。しかし……
非常に間延びして退屈な作品だった。子供向けのアニメーションとしていくらなんでも上映時間137分は長すぎないか?「クレヨンしんちゃん」劇場版の長さは大方90分くらいである。それがおこちゃまが集中出来る限界ではなかろうか。
結局、「クレしん」の約束事を無視してはいけないとか、上映時間は90分に収めないといけないとかいった枷(かせ)を外されて、原恵一がやりたい放題で撮ってしまったからこんな失敗作に成り果ててしまったんだろうと僕は考える。芸術家にとってある種の制約というのは必要なのだ。
特に蛇足に感じられたのが主人公のクラスメート、いじめられっ子の少女のエピソード。原はこう語る。
「いじめは外せない要素。ストレートに、やりたいことをやった」
いや原さん、あなたは間違っている。いじめは本題と関係なく、外すべき要素だ。そもそも彼女の存在自体が不要だよ。
マスコミに追い詰められて、河童が東京タワーをよじ登るのにも幻滅した。お前はエンパイア・ステート・ビルに登ったキングコングか!?
東京タワーは「大人帝国の逆襲」にも出てきたし、原が大好きなのは分かる。でも「大人帝国」の東京タワーは「ALWAYS 三丁目の夕日」同様に昭和の象徴としての意味があるが、「河童のクゥ」に出てくる必然性は全くない。マスコミとの追いかけっこも長すぎる。
キャラクター・デザインには魅力がないし、各々の登場人物の性格設定も在り来たりで薄っぺら。親に半ば強制的に映画館に連れてこられ、この映画を観るという拷問にも等しい時間を過ごさねばならない子供たちが心底気の毒である。
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