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2007年8月 4日 (土)

大阪シンフォニカー「近代音楽へのアプローチ」

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大阪シンフォニカー交響楽団のいずみホール定期演奏会を聴いた。結論から言おう。目の覚めるような素晴らしい企画であり、大変聴き応えがある濃密な時間を過ごせた。ブラボー!

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いずみホール内部の様子である。ウィーン・フィルがニューイヤーコンサートを開くウィーン楽友協会大ホール(ムジークフェラインザール)を彷彿とさせるような美しいホールである。音響の素晴らしさは大阪随一。立派なパイプオルガンもあり、安物のシンセサイザーみたいな薄っぺらい音しか出ないザ・シンフォニーホールのそれとは格が違う。

観客の入りは7割程度。まずまずだろう。明らかに4割を切っていた大フィルいずみホール特別演奏会の2倍くらいは入っていたのではないだろうか。

今回のプログラムは20世紀に書かれた作品がずらりと並べられた。ラヴェルの「クープランの墓」以外は滅多に聴く機会のない曲ばかりである。こういう演奏会を待っていたんだ!

糀場富美子(こうじばとみこ)作曲「輪廻」はチベットの「死者の書」をもとに書かれた面白い曲だった。曲は7楽章に別れ、まず客席後方に立ったソプラノ歌手が死者の阿鼻叫喚をあげる。音楽の進行と共に 死の恐怖→死への怒り→諦念→死の受容→魂の再生 へと至る。3楽章でソプラノはガンター(金剛鈴)を鳴らしながら舞台上に現れるし、ヴォーカリーズ(歌詞なし)で歌ったり、パーリー語・サンスクリット語で歌ったりもする。作曲者の糀場さんも会場にこられていて、作曲意図を解説された(「緊張して手が震えてます」と仰ったのが微笑ましかった)。まるでいずみシンフォニエッタみたいに斬新な選曲だなと嬉しくなった。

ソプラノは半田美和子さん。バーバー作曲「ノックスヴィル・1915年の夏」も歌った。半田さんを初めて聴いたのはシンフォニカー定期のマーラー「交響曲第4番」。素直で透明感ある歌唱に魅了された。オペラ歌手には珍しく(失礼!)ほっそりした体型の可愛らしい女性だ。タイプとしてはジュリー・アンドリュースを彷彿とさせる。

「ノックスヴィル・1915年の夏」は夏の倦怠感漂う、静謐で美しい音楽であった。コープランド、バーンスタイン、ジョン・ウィリアムズなどに共通するアメリカの血を感じた。

バレエ音楽「プルチネルラ」はストラヴィンスキーが新古典主義時代に入ってからの作品である。バロック時代イタリアの作曲家ペルゴレージへのオマージュとして書かれた。

「火の鳥」「ペトルーシカ」「春の祭典」といった、時代の最先端を走る革命的音楽を矢継ぎ早に発表した青年ストラヴィンスキーが、後年どうして古典の世界に回帰していったのか?血気盛んだった若き日の僕には全く理解できなかった。むしろそれは退行のように想われた。しかし、今ならその気持ちが理解できる気がする。ストラヴィンスキーは古典と戯れたかったのではないだろうか。それは夏の暑い日に、屋敷のなかの池で舟遊びをした平安貴族にも似た、雅(みやび)粋な心意気だったのだろう。そんなことを考えながら、今回「プルチネルラ」を愉しく傾聴した。

大山平一郎さんはオーソドックスで手堅い指揮をする人だ。それは反面、意外性や面白みに欠けることも意味する。だから大山さんのベートーベンとかモーツァルトなどの古典には食指が動かないが、今回の様な20世紀の曲には大山さんの資質は合っていた。大阪シンフォニカーも好演。耳に心地よかった。

こういう意欲的な演目をしてくれるのならば、シンフォニカーは是非今後も存続して欲しい。やっぱり4つの在阪オーケストラの中で、一番存在感に欠け不要なのは在り来たりな演目しかせず、市民への貢献度も低い大阪センチュリー交響楽団だなと改めて確信した次第である。

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コメント

センチュリーは、緑地公園音楽堂での星空コンサート、それに今年度からは若い音楽家を育成する『ユースオケ』を組織するなど、地道に活動してると思いますが
どのあたりがご不満でしょうか

投稿: 2ちゃんからきたです | 2007年8月 6日 (月) 16時28分

星空コンサートは単発の企画ですし、「ユースオケ」についてはセンチュリーが生き残るためのエクスキューズなんでしょうが、ピントが外れているように思われます。

赤字のオケがする必然性もなければ、別に府民への貢献でもないですし。例えば募集が「大阪府民」に限定されているのならば多少意味があるでしょうが、大阪府文化振興財団のお金をこのようなことに使って何がしたいんでしょう?

投稿: 雅哉 | 2007年8月 6日 (月) 17時12分

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