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2007年7月 9日 (月)

初披露!オーケストラ・リベラ・クラシカのベートーヴェン

今回の記事は以前投稿した「21世紀のベートーヴェン像」と併せて読んでいただくとありがたい。

バロック・チェリストとしても名高い鈴木秀美さん率いるオーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)が遂に大阪で最高の音響を誇るいずみホールにやって来た。作曲された当時の古楽器(秀美さんはこの言い方を嫌っていらっしゃるのでオリジナル楽器という呼称が相応しいか)で演奏するOLCが関西で演奏会をするのは初めてだし、C.P.E.バッハ(大バッハの次男)→ハイドン→モーツァルトと時代を下りながらプログラムを選定してきた彼らがベートーヴェンを取り上げるのも初めてである。満を持して今回世に問うたのは交響曲第一番と三番「英雄」である。

話題の演奏会だけに東京から聴きに来た人も少なからずいたようである。曲が終わるとブラボーの歓声が上がったが、「いつものあの人がまたやってる」という標準語の囁きが近くから聞こえてきたのだ。

鈴木秀美さんはフランス・ブリュッヘンが指揮する18世紀オーケストラのチェリストとして活躍してきた経歴がある。「英雄」といえばブリュッヘンが最も得意とする曲。だから秀美さんの解釈もブリュッヘンに通じるものがあった。

先日聴いた大植英次さんの「英雄」の最大の欠点は2楽章の重く引きずるようなテンポである。2楽章がこんなに遅いと、軽快な3、4楽章が浮いてしまう。秀美さんの「英雄」は2楽章もブリュッヘン同様速めのテンポで軽やかなフットワークだった。余り「葬送行進曲」という感じはしないが、これだと後半の楽章とのバランスが違和感なく自然である。「英雄」に関する限り僕は秀美さんを断固支持する。

秀美さんの解釈の特徴はその弾力性にあるだろう。フレーズ冒頭のアタックが強烈で、瞬発力に富む生き生きしたベートーヴェン像であった。瞬発力の代名詞といえばC.P.E.バッハであるが、曲のあちらこちらにC.P.E.の痕跡を感じた。これこそが、秀美さんが旗揚げ公演の時からC.P.E.を取り上げてきた意味だったのだろう。C.P.E.とハイドン、そしてベートーヴェンは根っこの部分で間違いなく繋がっているのだ。

37人という小編成であったが迫力がないかというとそんなことはまったくない。各々の声部(パート)が明瞭に聴こえ、しなやかで耳に心地よい。ベートーヴェンの時代はこのような響きがしていたんだなぁという新鮮な驚きがあった。

ブリュッヘン、コープマン、ノリントン、そして日本でも延原武春さんや鈴木雅明さんら古楽器オーケストラの指揮者たちはみな指揮棒を持たない。指揮棒を持って指揮するという現在のスタイルを確立したのはベートーヴェンより後の世代のメンデルスゾーン(1809-1847)だからである。鈴木秀美さんのスタイルも例外ではなかった。秀美さんは肩全体を使って激しく腕を振る。指揮で首を痛めた岩城宏之さんや大植英次さんの前例があるので見ているこちらがハラハラするくらいである(指揮の負担を軽くするために指揮棒が生まれたという側面もあるのではなかろうか)。ただ、秀美さんの場合はチェリストとしての仕事も多いので専業指揮者ほど長時間負荷がかからないのかも知れない。

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コメント

学生時代、クラシックギターを弾いていたのがきっかけで、ブリュッヘンのリコーダー(リュートによる伴奏付)のレコード(CDではありません)を買ったのを思い出しました。その一枚を聴いて以来、しばらくの間ルネッサンスやバロック初期の音楽にはまりこんで、アルヒーフレーベルののレコードを買いあさっていた時期がありました。ところが、未だに実際の古楽器による生演奏を聴いたことがないという片手落ちぶりです。大阪でそのような機会があればぜひ教えてください。

投稿: りっきぃ | 2007年7月 9日 (月) 21時37分

りっきいさん、コメントありがとうございます。東京と比較すると大阪は古楽器による演奏会が少ないですね。オーケストラ・リベラ・クラシカも大阪初公演で今後の予定はなさそうです。まず大阪なら日本テレマン協会のマンスリーコンサートが手っ取り早いでしょう。来月のコンサートの紹介は「チェンバロとフォルテピアノ」の記事に書いてあります。そして神戸まで足を伸ばせば鈴木雅明さん指揮のバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の定期演奏会が聴けます。11月25日にはBCJがいずみホールでヘンデルのオラトリオ「エジプトのイスラエル人」を演奏する予定です。この曲に関して僕は全く知識がないのでお勧めできるかどうかは全く分かりません。

投稿: 雅哉 | 2007年7月 9日 (月) 23時50分

トラックバックありがとうございました。
オリジナル楽器による演奏は録音や映像、また金聖響さんがやるような現代楽器での折衷的な演奏に接してはいましたが、実際に聞くと色彩的で美しいものでした。
リベラクラシカの皆さんのベートーヴェンはこの演奏が初演奏だったのですね。素晴らしい演奏でしたので、ぜひ他の曲も耳にしたいものです。

投稿: 名曲堂阪急東通店 | 2007年7月13日 (金) 18時01分

名曲堂さま、コメントありがとうございます。

リベラクラシカ、また大阪に来て欲しいですね。今度はC.P.E.とかハイドンのプログラムで是非聴きたいです。

投稿: 雅哉 | 2007年7月14日 (土) 12時29分

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いずみホールでベートーヴェンの交響曲全曲演奏会がある、というのでその第1回を聴いてきました。 鈴木秀美さんの指揮する古楽器団体オーケストラ・リベラ・クラシカによる1番と3番でした。 指揮をするというよりも音楽を形作っているような雰囲気のある指...... [続きを読む]

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