在阪オケ問題を考える
産経新聞7/29の記事より抜粋
大阪府内にある4つの交響楽団を統合する必要性が指摘されていた問題で、当面は統合をしないことで4楽団が事実上合意したことが明らかになった。
大阪シンフォニカー交響楽団、大阪センチュリー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団の理事長が26日、初めて会談。当面はそれぞれの個性を尊重し、共存することで合意したという。4楽団をめぐっては、昨年春に関西経済連合会の秋山喜久会長(当時)が「大阪に4つもあるのはどうか」と語ったことをきっかけに統合の必要性などが議論された。府と市、経済界による在阪楽団への支援は合計で約9億円といわれ、支援する側の財政事情が悪化しているため、統合によって援助額を減らしたいとの思惑もあった。ただ、「各楽団は特徴ある活動を続けてきた歴史がある。統合すると大阪の文化が損なわれる」(楽団関係者)との声も根強く、具体的な検討には至らなかった。
4楽団の理事長たちの言う理屈は全くの詭弁である。まずはっきりさせておかなければならないのは、オーケストラは西洋の文化であり、大阪の文化ではないということ。例えばこういう例を想像して欲しい。仮にニューヨークに4つの歌舞伎座(雅楽団とかタンゴ・オーケストラでもよい)があったとする。いずれも赤字経営で国からの援助がないと立ち行かない。そこで4つを統合する提案が出された。しかし「歌舞伎座(雅楽団)を統合するとニューヨークの文化が損なわれる」という反対意見が持ち上がる……どう考えても、変じゃないですか?
オーケストラも大阪の文化であると胸を張って言うためには、ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキー等ばかりではなく、もっと日本人作曲家の曲を演奏しなければならないだろう。その点では先日「関西の作曲家によるコンサート」を開催した大フィルの姿勢は評価出来る。では大阪センチュリーや大阪シンフォニカーの年間スケジュールはどうか?2007年度で取り上げる日本人作曲家は皆無、ゼロである。例えば昨年は武満 徹没後10年という記念の年だった。しかし武満を定期演奏会で取り上げた在阪オケは大フィルの「ノスタルジア」とシンフォニカーの「死と再生」たった二曲という寂しさである。なにが大阪の文化だ!?ふざけるな。(その点、定期演奏会で「武満 徹に捧ぐ」というプログラムを組んだいずみシンフォニエッタの企画は良かった。)
次にオーケストラの個性とは何か?を考えたい。僕は「弦がビロードのように滑らかで美しい」とか「金管の響きが輝かしく圧倒される」等、オケの個性をとやかく言えるのはウィーン・フィル、ベルリン・フィル、シカゴ交響楽団といった世界トップレベルのオーケストラに限られるのではないかと考える。在阪のオケで一番上手いのは大フィルであるのは衆目の一致するところだろう。それでも日本のオケ全体の中で見ればNHK交響楽団より格下である。そういった低いレベルで個性云々などと主張するのはおこがましい。在阪4楽団の違いはどこが上手くて、どこが下手か位しか判断基準はない。そして下手なオケは存在意義がないので解散すればいい。
オーケストラの経営がいかにお金がかかり、採算が取れない存在であるかということについて大阪シンフォニカーの楽団長である、敷島鐵雄さんの興味深いお話がこちらで読める。
別に大阪にオケがいくつあろうが構わない。もし独立採算制が成り立っているのであれば。問題はオケの存在は企業や公的支援に頼らなければ決して成り立たないというところにある。毎年赤字を生む団体が4つあるのだからそれをまとめようというのは至極当然な発想である。経営破綻した銀行の統廃合と同じである。
今年創立60周年を迎えた大フィルは4楽団のうち最も歴史があり、優秀な奏者が揃っている。音楽監督の大植英次さんもカリスマ性と絶大な集客力があり、星空コンサートとか大阪クラシックなどの優れた企画で市民への貢献度も高い。当然大フィルが潰れては困る。
4つのうち最も奏者の技量が低いのは関西フィルであるが、ここは定期演奏会で20世紀以降の音楽にも積極的に取り上げ、意欲的なプログラムを組んでいる。全てジョン・ウィリアムズが作曲した映画音楽の演奏会をしたり、大晦日に久石譲さんと共演するジルベスターコンサートをやったりと、なかなか面白いことをやってくれる。その弛まぬ営業努力は買いたい。
大阪シンフォニカーは大和ハウスという強力なスポンサーを得て、経営状態は安定したようだ。政府・自治体の援助に頼らないで済むのなら、存続すれば宜しかろう。
で結局、一番存在意義がないのが大阪センチュリーである。ここは1989年に設立された財団法人大阪府文化振興財団が運営している(1990年に第1回定期演奏会)。しかし財団の基金は10年度末には底をつくと予測されている。いってみればセンチュリーはバブルの徒花として生まれ、バブルの崩壊と共にその命運はとっくに尽きているのである。昨年4月の関西経済連合会会長の発言も、それを見据えてのものだった。
大阪に4つもオケはいらない。だからセンチュリーは解散すればいい。しかし日本にはプロのオーケストラがない都道府県が沢山ある。例えば関西なら和歌山とか奈良。だから和歌山センチュリー交響楽団とか奈良センチュリー交響楽団として生き残る道を模索してはどうだろうか?それならば存続する意義は大いにあるだろう。
追記:センチュリーの今後のあり方について不惑ワクワク日記さんが独自の見解を述べられているのでご紹介しておく。
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