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2007年5月29日 (火)

ブラックブック

評価:B+

「ロボコップ」「トータル・リコール」「氷の微笑」「スターシップ・トゥルーパーズ」「インビジブル」などで一斉風靡したポール・バーホーベン監督といえば、暴力的で下品な映画を撮るエロおやじという印象が強い。

とにかく彼は豪快な人だ。「ショーガール」ではハリウッドの最低な映画を選ぶゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)で10部門ノミネート、6部門制覇(後に1990年代最悪作品賞という特別賞も受賞)という偉業を達成した。授賞式に出席する候補者が皆無な中、最悪監督賞を受賞したバーホーベンは意気揚々と現れ、トロフィーを高々と掲げ雄たけびを上げたことは今や伝説となっている。

そのバーホーベンが実に23年ぶりに故国オランダに戻って撮ったのが「ブラックブック」である。ナチスドイツを題材にした映画であり、アカデミー外国映画賞のオランダ代表に選ばれた。最終選考の9作品には残ったが、惜しくもノミネート入りは逃した。物語だけ聞くとあの暴れん坊の不良おやじが文芸映画を撮ったのか!?と驚愕し、すわ路線変更かと懼れたのだが、映画を観るとそれは単なる杞憂だった。

ナチスの戦争犯罪を告発しようというような意志は彼には毛頭なく、もうまるでヒッチコック映画みたいなハラハラどきどきのサスペンス仕立てになっている。そしてヒロインに対しては情け容赦なく、サディスティックなまでに苛めまくる。迫害されるユダヤ人のヒロインを汚物まみれにしたり、ゲロ吐かせたりして喜ぶ映画監督が、世界広しといえど果たしてバーホーベン以外にいるだろうか?ケレン味たっぷりで悪趣味なバーホーベン節は健在で、映画館でニヤニヤしっぱなしだった。いやはや天晴れ。三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。

しかしこういう映画に眉をひそめる「良識ある人々」というのは当然いる筈であり、これは「観客を選ぶ映画」と言えるだろう。これを代表に決めたオランダの人々に対して快哉を叫びたい。

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