大阪、再発見。
今年の本屋大賞で「一瞬の風になれ」と競り合って僅差で2位となり、山本周五郎賞を受賞した「夜は短し歩けよ乙女」を読んだ。奇想に満ちた青春小説で、すごく面白かった。これを書いた森見登美彦は1979年生まれなのでまだ二十代の若い作家である。主人公は京都の大学生なのだが、文中に和服の女性が織田作之助全集を読んでいる場面が出てくる。ちょっと興味が湧いたので織田作之助の本を図書館から借りてみた。
大正2年に大阪の天王寺に生まれた織田作之助の代表作はなんといっても「夫婦善哉」だろう。昭和30年に森繁久弥主演で映画になり、これは日本映画史上に輝く不朽の名作となっている。大阪ミナミの法善寺横町が舞台となっており、今でも営業している「自由軒」のライスカレーが登場。今回初めて知ったのだが、織田作之助は結核で33歳の若さで亡くなったそうだ。「夫婦善哉」は弱冠27歳の作品とか。これには驚いた。
吹奏楽の世界では淀工(大阪府立淀川工科高等学校)の演奏で有名な「大阪俗謡による幻想曲」という名曲がある。淀工は全日本吹奏楽コンクールで過去5回これを取り上げ、すべて金賞を受賞している。作曲をした大栗 裕も大阪生まれで、かつては大阪フィルハーモニー交響楽団のホルン奏者だった。この大栗が昭和32年にオペラ「夫婦善哉」なるものを発表している。織田作之助の描く世界に共感するものを感じたのだろう。
今年の7月12日に大阪フィルハーモニー交響楽団が「関西の作曲家によるコンサート」という面白い企画をしている。詳細はこちら。滅多に聴けない大栗 裕や貴志康一の作品が取り上げられている。大阪府吹田市に生まれた貴志康一は28歳の若さで心臓麻痺で亡くなった人で、彼がベルリンフィルを振ってレコーディングもされた交響組曲「日本スケッチ」は最近吹奏楽用に編曲され、大阪市音楽団のライブCDが出ている。
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