尾高忠明の武満とエルガー〜大阪フィル定期

関西フィルの首席指揮者・藤岡幸夫のシベリウスとヴォーン=ウィリアムズは超一級品である。同様に、大フィルの音楽監督に就任した尾高忠明と言えば、武満徹とエルガーを振らせたら(現役指揮者では)右に出る者がいない(出演キャンセルが続く小澤征爾は現役として認めない)。彼は英エルガー協会からエルガー・メダルを授与された唯一の日本人である。

1月17日(木)フェスティバルホールへ。

尾高忠明/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。ヴァイオリン独奏は神尾真由子。

  • 武満 徹/トゥイル・バイ・トワイライト
  • ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
  • エルガー/交響曲 第1番

twilとは「あや織り」のことでtwilightは「薄明/黄昏時」。移ろいゆくもの、ゆらぎが、きめ細やかな音のパレットで捉えられる。ぼんやりして焦点が定まらない世界。

武満にはとか、雨・海)をテーマにした作品が非常に多い。「夢の時」「夢の引用」「夢の縁へ」「夢見る雨」「ウォーター・ドリーミング」「雨の樹」「雨の庭」「雨ぞふる」「海へ」「星・島」「From me flows what you call time(私から”夢”と呼ばれるものが流れ出す)」等々。夢も水も形が定まらない曖昧な存在、ゆらぎである。それは黄昏(「君の名は。」の”かたわれ時”)とか、も同じだろう。「虹へ向かって、パルマ」という作品もある。

ブルッフの神尾は野太い音を奏で、張りのある演奏だった。

尾高のエルガーは骨太である。第1楽章はNoble(気高い)、第2楽章のスケルツォは勇ましい。叙情的な第3楽章アダージョでもしっかりと一本の芯が通っている。そして闘争的な終楽章。アスリートのようにしなやかな筋肉を持った、男臭い演奏だった。僕は「う〜ん、マンダム」のCM(演出は大林宣彦)で有名な俳優チャールズ・ブロンソンを思い出した。動画はこちらとか、こちら。現役のスターならさしずめ、ベネチオ・デル・トロかな。

最後に、尾高さんに今後どうしても取り上げてほしい曲を挙げておく。

  1. 武満徹:系図 ―若い人たちのための音楽詩―
    (ナレーターは絶対に10代の若い女の子で!上白石萌音・萌歌姉妹を推薦)
  2. 武満徹:夢の時 Dreamtime
  3. エルガー:オラトリオ「ゲロンティアスの夢」

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新演出!東宝ミュージカル「マリー・アントワネット」ダブルキャスト観劇記

梅田芸術劇場でミュージカル「マリー・アントワネット」を2度、観劇。

1月9日(水)ソワレのキャスト、

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14日(月・祝日)ソワレのキャストは、

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僕は東宝が製作したこのミュージカルの初演を2007年に梅芸で観ている。原作は遠藤周作の小説「王妃 マリー・アントワネット」で、演出は栗山民也。作詞・作曲は「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」のクンツェ&リーヴァイ。その時の配役は、

  • マリー・アントワネット:涼風真世
  • マルグリット・アルノー:新妻聖子/笹本玲奈(ダブルキャスト)
  • アニエス・デュシャン:土居裕子
  • フェルセン伯爵:井上芳雄
  • ルイ16世:石川禅
  • オルレアン公:高嶋政宏
  • カリオストロ:山口祐一郎

新妻と笹本両方の出演回に足を運んだ。栗山民也はその後、ドイツ・ブレーメン(09年)公演でも演出家として招聘された。また本作は韓国(14年)やハンガリー(16年)でも上演された。

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今回はロバート・ヨハンソンによる新演出版となり、台本も大幅に改訂された。カリオストロという役も消滅した。どうやらロバート・ヨハンソンは韓国で活躍している人らしく、韓国バージョンを逆輸入したというのが真相らしい。

  • ローズ・ベルタン:彩吹真央
  • ジャック・エベール:坂元健児
  • オルレアン公:吉原光夫
  • ランバル公爵夫人:彩乃かなみ

〈遠い稲妻〉〈孤独のドレス〉〈私たちは泣かない〉等、新曲がふんだんに追加され、第1幕冒頭フェルセンのソロ〈マリー・アントワネット〉や、第2幕フィナーレで全員が歌う〈どうすれば世界は〉も初演版にはなかった。

旧演出版はギロチンで次々と人の首がはねられるし、民衆は理性を欠いた単なる暴徒だし、「なんて血なまぐさいミュージカルなんだ!」と思った。容赦のない異色作。ただ僕はそれを面白がったが、当然後味は悪く、繰り返し観ようという気にはなれなかった。

ところが新演出版はガラリと雰囲気が変わり、王妃とフェルセンの悲恋にフォーカスが当てられてロマンティックな作品になった。宝塚歌劇「ベルサイユのばら ーフェルゼンとマリー・アントワネット編ー」に接近した、と言えば分かり易いかも知れない。

というわけで、とっても見やすい、王道を征くミュージカルに生まれ変わった。但し、復讐の連鎖で成立する世界を憂う終曲〈どうすれば世界は〉の内容が、木村信司作による宝塚歌劇「王家に捧ぐ歌」に類似している点は些か気になった。

元々、本作のタイトルは「MA」だった。

Logo

MAはマリー・アントワネット( Marie Antoinette )のイニシャルであると同時に、 掃き溜め生まれのマルグリット・アルノー( Marguerite Arno )も意味している。つまり〈ふたりでひとり〉、一人の女性の分身光と影を描いていると解釈出来る。言い換えるならばドッペルゲンガー二重身)であり、ミュージカル「モーツァルト!」に於けるヴォルフガングとアマデの関係にそっくりである。同じ遺伝子を持つ人間でも、環境により全く違った性格に育つというわけだ。

僕は花總まり演じるマリー・アントワネットを都合3回観ている。

  • 「ベルサイユのばら2001」@宝塚大劇場、2001年
  • 「1789 -バスティーユの恋人たち-」@梅芸、2016年
  • 「マリー・アントワネット」@梅芸、2019年

マリーの没年が37歳であり、花ちゃんは現在45歳。流石に最初は「この役には年を取りすぎでは?」と感じたが、追い詰められてゆく物語の後半に進むに従いどんどん良くなっていくので驚嘆した。「ベルばら」時代より演技に深みを増し、断然素晴らしい!〈女であること〉ゆえの哀しみ。気品があり、「やっぱりコスチューム・プレイで彼女の右に出るものはいないなぁ」と改めて確信した。笹本玲奈は歌が上手いし特に欠点はないのだけれど(若さという利点もある)、やっぱり庶民のマルグリット・アルノーの方が似合っていた。

今回のマルグリットについては目力(めぢから)があってパワフルなソニンに軍配を上げる。昆夏美も決して悪くないんだ。しかし、花總まり✕ソニンのコンビの方が強烈過ぎた。圧巻だった。

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大竹しのぶ「ピアフ」

12月16日(日)ピロティホールへ。

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大竹しのぶが主演する「ピアフ」を観劇。演出は栗山民也。〈ミュージカル〉と銘打ってはいないが、大竹がガンガン歌いまくるので〈セミ・ミュージカル〉と言えるだろう。

以前大竹はNHK紅白歌合戦でもピアフの持ち歌を披露しており、自家薬籠中の物としている。まさに入魂の演技で、凄みを感じる。ピアフと大竹が渾然一体となっており、最早その境目が分からない。故・杉村春子にとっての、「欲望という名の電車」のブランチのような関係である。そういえば大竹もブランチを演じた。

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ミュージカル「レベッカ」

12月23日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。

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「エリザベート」「モーツァルト!」を生んだ作詞・作曲のコンビ、クンツェ&リーヴァイが手掛けたミュージカル「レベッカ」を観劇。8年前のレビューは下記。

前回観たキャストは「わたし」:大塚千弘、マキシム:山口祐一郎、ダンヴァース婦人:シルビア・グラブ。今回はマキシムが変わらず、「わたし」:平野綾、ダンヴァース婦人:涼風真世。ほか出演は森公美子、石川禅、吉野圭吾ら。演出は山田和也。

チケットを入手するのに相当苦労した。「わたし」はトリプル・キャストで、大塚と平野の回は先行抽選に申し込んでも落選ばかり。乃木坂46・桜井玲香の回だけ全日、余裕で余っているという状況。僕は桜井が大嫌いなので、絶対に嫌だった。で、5,6回目の挑戦で漸く平野が当たったという次第。歌唱力がある人なので文句なし!彼女は京アニ「涼宮ハルヒの憂鬱」のタイトルロールで一世を風靡したわけだが、ミュージカル「レディ・ベス」のエリザベス一世、「モーツァルト!」のコンスタンツェ、そして「ブロードウェイと銃弾」のアニメ声の愛人と、それぞれの役で全く声質を変えて演じているのが凄い。100の声を持つ女優である。

ダフネ・デュ・モーリア原作による「レベッカ」といえばアルフレッド・ヒッチコック監督の映画が余りにも有名だが、2019年にはリリー・ジェイムズ、アーミー・ハマー主演でリメイクされることが決まっている。Netflixから配信される予定(詳細はこちら)。

つまり「ロミオとジュリエット」とか4度映画化された「スター誕生」同様に、最早古典的名作であり、その主題はいつの時代にも通用する普遍性があるということだ。

〈その死後も影響力を発揮し、死者が生者を支配する〉というのが「レベッカ」の基本構造である。これは世間一般でも見られる現象で、例えば朝比奈隆(指揮者)亡き後の大阪フィルハーモニー交響楽団は未だに朝比奈の亡霊に囚われているとしばしば感じる。後任の音楽監督(大植英次、尾高忠明)が、あまり得意じゃないのにベートーヴェン・チクルスを(無言の圧力で)させられたり、就任記念演奏会にブルックナーのシンフォニーを取り上げたり。また上方落語に目を向けると、故・桂枝雀の芸の支配下にある噺家は(枝雀一門であるかどうかに関わらず)少なくない。

落語は伝承芸能(口伝)なので、弟子の背後に師匠の影が見えることはしばしばある。しかし枝雀自身は米朝師匠の枠を打ち破り、軽やかに全く新しいものを打ち立てた。死者の影から逃れて、どうやって自分の足で立ち上がるか。それが「レベッカ」の主眼である。

やっぱりクンツェ&リーヴァイの音楽はいいね!

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米アカデミー外国語映画賞&監督賞最有力!「ROMA/ローマ」とフェデリコ・フェリーニ

アルフォンソ・キュアロンが監督したメキシコ映画「ROMA/ローマ」はヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、米アカデミー賞でも外国語映画賞及び監督賞受賞をほぼ確実にしている(既にゴールデングローブ賞を同部門で受賞)。焦点は最早、外国語映画として史上初の作品賞(大トリ)を勝ち取るのか!?に移っている。因みに過去、フランス映画「アーティスト」(2011)が作品賞を受賞しているが、ダイアログは英語だった。日本では12月にNetflixから配信されており、本作がアカデミー作品賞や監督賞、外国語映画賞を受賞すれば、配信作品として史上初の快挙となる。

スティーヴン・スピルバーグ監督は動画配信サービスが手掛けた映画に対して、「私は(映画賞の選考対象になるために)数か所の劇場で1週間上映されたくらいの作品を、アカデミー賞候補の選考対象にするべきではないと思っている」「実際にはテレビのフォーマットで製作したならば、それはテレビ映画だと思う」と述べているが、最早時代の流れを押し止めることは出来ないだろう。スピルバーグのように、自由に映画が撮れるような潤沢な資金を持つフィルムメーカーなど稀有の存在なのである。

評価:AA  公式サイトはこちら

Roma

視聴したのは我が家の55型 4Kスマートテレビである。白黒映画。撮影には6Kの65mmデジタル・シネマカメラ ARRI ALEXA 65(詳しくはこちら)が使用された。つまりフィルム撮影ではないので、映画館で観るメリットは皆無である

ROMAというタイトルだがイタリアが舞台ではない。メキシコシティのコロニア・ローマ地区を指す。

キュアロンはここで中流階級の白人家庭に生まれた。本作は彼の幼少期を、住み込みで働く先住民のお手伝いさんクレオを主人公として描いている。映画の最後に「リボへ」という献辞が登場するが、キュアロンの乳母のこと。1970年末から71年にかけての物語である。当時彼は9歳だった。

本作を一言で評すなら、キュアロン版「フェリーニのアマルコルド」。これに尽きるだろう。

Amarcord

「アマルコルド」もアカデミー外国語映画賞を受賞したが、フェデリコ・フェリーニ監督の故郷である北部イタリアのリミニ地方の、今はもう死語になっている言葉"a m'arcord "(私は覚えている)が語源である。「ROMA/ローマ」は幼少期の想い出を描く「アマルコルド」を基調としつつ、やはりフェリーニの自伝的映画「青春群像」の要素も散りばめられている。また身勝手な男を優しく許してしまうヒロイン・クレオのイメージは、間違いなくジュリエッタ・マシーナがフェリーニの「道」で演じたジェルソミーナや、「カビリアの夜」の娼婦カビリアに繋がっている。

La_strada

つまり【クレオ ≒ ジェルソミーナ/カビリア ≒ マグダラのマリア(新約聖書に登場する罪深い女)】という等式が成立する。

1971年を迎えた新年パーティの場面で、ターンテーブルのレコードから流れるのはアンドリュー・ロイド・ウェバーが作曲したロック・オペラ「ジーザス・クライスト・スーパースター」である。じつはこれ、1970年にまず先行で2枚組LPレコードが発売され、ブロードウェイで初演されたのは71年なのだ。で、かかっている曲は"I Don't Know How To Love Him"(私はイエスがわからない)で、マグダラのマリアが歌うナンバーなのである!ね、一目瞭然でしょ?

こうして考察していくと、なぜタイトルが(紛らわしい)ROMAなのか、得心が行くだろう。「道」「アマルコルド」など、フェリーニ映画の多くはローマのチネチッタ撮影所で生み出されており、そのものズバリ"ROMA"(フェリーニのローマ)という作品もある。つまり本作は和歌で言うところの〈本歌取り〉なのである。

Roma

またキュアロンの「ROMA/ローマ」では大型車〈フォードのギャラクシー〉が父親の威圧的存在感を象徴するのだが、最初にこの車が登場した時に父親がカーステレオで聴いているのがベルリオーズ:幻想交響曲の第2楽章(演奏はコリン・デイヴィス/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)。このシンフォニーは〈幻の女〉に囚われたひとりの男の狂気を扱っているのだが、それがしっかり映画の内容にリンクしている。

アメリカ映画「宇宙からの脱出」を家族で劇場に観に行く場面がある。これでピンときたのが、「うゎ!『ゼロ・グラビティ』(アカデミー監督賞受賞)の原点はこの体験にあったんだ」ということ。

キュアロンと言えば撮影監督エマニュエル・ルベツキ(「ゼロ・グラビティ」「バードマン」「レヴェナント」で3年連続アカデミー撮影賞受賞)とのコンビが有名である。しかし今回ルベツキは参加出来ず、キュアロン自らがカメラを回した。で「トゥモロー・ワールド」同様に、ここぞという時の長回しが効いている。まず映画冒頭の俯瞰ショットはジャック・ドゥミ監督「シェルブールの雨傘」(1964)以来と言っていいくらいの鮮烈な印象を受けた。またクライマックス、海辺での移動撮影(ドリーショット)が「どうやって撮ったの!?」というくらい凄い。

本作には女性に対する敬意・感謝と、メキシコ先住民に対する贖罪の気持ちがいっぱい詰まっている。掛け値なしの傑作である。

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再び法師温泉へ!

「また行きたい!」という小学校1年生の息子のたっての希望もあり、年末年始は2年連続、群馬県の法師温泉で4泊5日を過ごした。

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前回も書いたが、僕が法師温泉のことを初めて知ったのは1986年4月26日に公開された角川映画「彼のオートバイ、彼女の島」(大林宣彦監督)を劇場で観た時だった。原田知世の姉・貴和子と竹内力のデビュー作である。

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訪れて初めて知ったのだが、やはり大林監督が演出し高峰三枝子、上原謙が出演した国鉄のCM「フルムーン」(1981年放送)や、映画「テルマエ・ロマエ II」もここでロケされた。

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今冬は全国的に雪不足で、法師温泉も12月28日まで全く積もっていなかったという。しかし寒波の到来で僕らが宿に着いた29日にはすっかり白銀の世界に変貌していた。近くにある赤沢スキー場は翌30日から営業を開始した。

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上写真の法師乃湯だけではなく、野趣あふれる露天風呂の玉城之湯もある。雪が深々と降りしきる中、笠をかぶり入る湯は格別の味わいがある。朝6時頃入浴すると、湯船から有明の月が見えた。

朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
(百人一首 より;坂上是則)

ごうごうと森が鳴る音も聴こえた。

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スキー場には2回訪れた。柔らかい新雪が降り積もる30日に息子の乗るソリはあまり滑らなかったが、根雪でアイスバーンとなった元旦には滑走距離がぐんぐん伸びた。

愉しそうにソリで滑る息子を眺めながら、中学生くらいになって彼に映画「市民ケーン」を観せたら、薔薇のつぼみ(Rosebud)の真相が明らかになる場面で「主人公の気持ち、僕よく分かるわぁ」と言うんじゃないかな、と思った。

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スキー場から宿に戻ると、温めのお湯で悴む手足を癒やした。

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(みそぎ)の感覚。僕は日本の神話(古事記)でイザナギが黄泉の国から地上に戻ってきた際の逸話を思い出した。彼が左の目を洗った時に生まれたのが天照大御神(アマテラスオオミカミ)で、右の目からは月読命(ツクヨミノミノミコト)、鼻からは須佐之男命(スサノオノノミコト)が生まれたという。

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ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート今昔物語

旅先の宿・法師温泉でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団恒例のニューイヤーコンサート 2019をNHKの中継で観た。

今年現地の特設スタジオにゲストとして登場したのはウィーン・フィルの元コンサートマスター、ライナー・キュッヘル夫妻と、2018年11月26日に同団のヴィオラ奏者と結婚した中谷美紀。興味深かったのは、NHKのアナウンサーが「女優の」ではなく「俳優の中谷美紀さんです」と紹介したこと。これはきっと中谷のこだわりなのだろう。それから彼女の結婚について一切触れなかったことも反って異様で、可笑しかった。プライベートに関してはアンタッチャブルということなのかな?中谷の口から「シェーンベルク」などといった固有名詞が飛び出したので、感心することしきり。

さて、2019年新春の指揮者として抜擢されたのはドイツ・ベルリン出身のクリスティアン・ティーレマン。

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僕は時代に背を向ける守旧派・ティーレマンのことを〈生きた化石〉と揶揄しており、大嫌いなのだが、お手並み拝見と構えていたら意外にも極上の演奏で驚いた。

ピリオド・アプローチ(古楽奏法)が主流となった現代の演奏の多くはどちらかと言えば感情を排し、Dryである。ところが今年のニューイヤーはWetで、これだけ艶のある音は本当に久しぶりに聴いた気がした。ティーレマンはR.シュトラウスのオペラを得意としており、「ばらの騎士」へ通じる馥郁たる色香を感じた。リズムも軽やか。

僕が初めてニューイヤーコンサートを視聴したのは小学生の頃である。未だボスコフスキーが健在だった。考えてみれば過去40年の変遷を見てきたわけで、中には若い人にとって耳新しいこともあるんじゃないか?そう思い、今昔の違いを語ってみることにした。

1)昔は指揮者が固定制だった。

創始者であるクレメンス・クラウスが1954年に亡くなり、当時ウィーン・フィルのコンサートマスターだったヴィリー・ボスコフスキーが1955年から79年まで25年間、指揮者を務めた。ボスコフスキーの病気で登壇したのがロリン・マゼール。彼は7年連続で登板した。ボスコフスキーはヴァイオリンを弾きながら指揮台に立ち、時折り弓を指揮棒代わりに使った。この「弾き振り」スタイルはピッツバーグ交響楽団でヴァイオリニストとして活躍した経験を持つマゼールも踏襲した。そして87年のカラヤン以降は「弾き振り」がなくなり、毎年指揮者が交代するシステムとなった。因みに2020年に登壇する予定なのはラトビア出身のアンドリス・ネルソンスである。

2)昔NHKは第2部からしか生中継をしていなかった。

現在は日本時間の夜7時15分から第1部の演奏が開始され、休憩を挟み8時15分から第2部が始まるというスタイルだが、昔は第2部からしか放送がなかった。第1部も視聴出来るようになったのはNHK-BS放送開始(89年6月1日)以降と記憶している。地上波では従来どおり第2部のみ放送し、「衛星放送なら第1部から見れますよ、だらか専用アンテナを設置してくださいね!」という意向だった。

3)女性楽員問題と〈ザビーネ・マイヤー事件

ボスコフスキー時代、ウィーン・フィルやベルリン・フィルの楽員は全員男性だった。1982年、ベルリン・フィルの芸術監督兼終身指揮者だったカラヤンが女性クラリネット奏者ザビーネ・マイヤー(当時23歳)をBPOに入団させようとしたが猛反発を受け、楽員全員による投票でマイヤーの仮採用は否決された。「マイヤーの音には、BPOの管楽器奏者にとって不可欠の、厚みと融合性が欠如している」というのが総意だった。この〈ベルリン・フィル入団騒動〉でマイヤーはかえって有名になり、現在では世界屈指のソリストとして認められている。〈ザビーネ・マイヤー事件〉でベルリン・フィルとの関係がすっかり冷え込んだカラヤンは晩年、ウィーン・フィルに客演することが多くなった。チャイコフスキーの後期交響曲やドヴォルザークの交響曲第8番、9番、ブルックナーの交響曲第7番、8番がウィーン・フィルとレコーディングされたのも、87年のニューイヤーコンサートにカラヤンが登場したのも、こういう経緯があった。またこの時にソプラノのキャスリーン・バトルが「春の声」を歌ったが、異例の出来事であり、カラヤン以降にゲスト出演者は全くいない。

カラヤンの死後シェフがクラウディオ・アバドに交代し、ベルリン・フィルは女性奏者をどんどん採用するようになった。しかしウィーン・フィルは頑なに男尊女卑を押し通し、女性の権利団体から国際的な非難を浴び続けた。外圧に耐えかねて漸く女性(ハープ)奏者の入団を認めたのは1997年のことである。現在は全楽員の約1割を女性が占め、初の女性コンサート・マスターも誕生した(アルベナ・ダナイローヴァ)。

4)客席の日本人

DVDで確認することが出来るが、ボスコフスキーが「弾き振り」していた頃のニューイヤーコンサートの客席には殆ど日本人がいない。しかし今年の中継を見ると、カメラが客席のどこを写しても、日本人だらけ。雨後の筍のごとく、うじゃうじゃいる。ここ40年で日本人が豊かになったことの証左であり、国際的に見てもとりわけ我々がニューイヤーコンサートを愛しているということなのだろう(年末に第九を聴く日本独自の習慣に似ている)。

5)ウィーン国立バレエ団

演奏中にウィーン国立バレエ団の踊る映像が挿入されるのは、ボスコフスキー時代から現在まで変わらない伝統である(映像ソフトとして販売される商品にはない)。しかしダンスの質が大きく変貌した。昔は「いもねーちゃんと、いもにーちゃんが田舎の古風な踊りを披露している」という印象だった。

はっきり言ってウィーン国立バレエ団は世界的に見て二流〜三流の団体である。因みに一流と言えるのはパリ・オペラ座バレエ、英国ロイヤル・バレエ、ボリショイ・バレエ、マリインスキー(旧キーロフ)・バレエ、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)、ニューヨーク・シティ・バレエ、そしてミラノ・スカラ座バレエ団といったところである。

ところが今年のパフォーマンスを観ると、斬新で洗練された振付が施されており、ダンサーも白人だけではなく、アジア系も混ざり国際的になっている。目が覚めるような鮮烈な印象を受けた。

6)アンコール

アンコールで「美しく青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」が演奏されるのは今も昔も変わらぬ光景だ。しかし指揮者が「ラデツキー行進曲」で客席を振り向き、手拍子をコントロールするようになったのはマゼール以降である。ボスコフスキー時代は聴衆任せだったので、中間部の静かなところで手拍子がそれに同調出来ず、全く統制が取れていなかった。

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2018年映画ベスト39&個人賞発表!

2018年に劇場で初公開された作品及び、Netflix, Huluなどインターネットで配信された映画を対象とする。ただし、「ザ・クラウン」「ゲーム・オブ・スローンズ」「ストレンジャー・シングス」「侍女の物語(The Handmaid's Tale)」など連続ドラマは除外する。タイトルをクリックすれば過去に僕が書いたレビューに飛ぶ仕組み。

ここで断っておかなければならないのは、本来「花筐」と「勝手にふるえてろ」は東京で17年に公開された作品だが、関西での公開が遅かったために今年に入れた。

またアカデミー監督賞(アルフォンソ・キュアロン)並びにアカデミー外国語映画賞の大本命「ROMA/ローマ」(メキシコ代表)と、「メアリーの総て」「グリンチ」「シュガーラッシュ・オンライン」のレビューは年末までに間に合わなかったので、年が明けてから書く予定。悪しからず。

  1. ペンギン・ハイウェイ
  2. 若おかみは小学生!
  3. 花筐/HANAGATAMI
  4. ROMA/ローマ
  5. 万引き家族
  6. 勝手にふるえてろ
  7. リズと青い鳥
  8. アリー/スター誕生
  9. アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル
  10. ミッション・インポッシブル/フォールアウト
  11. 未来のミライ
  12. ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
  13. レディ・プレーヤー1
  14. スリー・ビルボード
  15. シェイプ・オブ・ウォーター
  16. ラブレス
  17. メアリーの総て
  18. シュガーラッシュ・オンライン
  19. ウインド・リバー
  20. カメラを止めるな!
  21. インクレディブル・ファミリー
  22. ファントム・スレッド
  23. ザ・スクエア 思いやりの聖域
  24. 生きのびるために
  25. ボヘミアン・ラプソディ
  26. パディントン2
  27. デトロイト
  28. 羊と鋼の森
  29. ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
  30. 来る
  31. ちはやふる ー結びー
  32. グレイテスト・ショーマン
  33. アンダー・ザ・シルバーレイク
  34. アナイアレイション ー全滅領域ー
  35. グリンチ
  36. 犬ヶ島
  37. ゲティ家の身代金
  38. フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
  39. クワイエット・プレイス
監督賞:大林宣彦(花筐/HANAGATAMI
主演女優賞:松岡茉優(勝手にふるえてろ
助演女優賞:安藤サクラ(万引き家族
主演男優賞:ブラッドリー・クーパー(アリー/スター誕生
助演男優賞:サム・エリオット(アリー/スター誕生
スタント賞:トム・クルーズ(ミッション・インポッシブル/フォールアウト
脚本賞:吉田玲子(リズと青い鳥若おかみは小学生!
撮影賞:アルフォンソ・キュアロン(ROMA/ローマ
編集賞:大林宣彦花筐/HANAGATAMI
美術賞:篠原睦雄(リズと青い鳥
衣装デザイン賞:マーク・ブリッジス(ファントム・スレッド
作曲賞:アレクサンドル・デスプラ(シェイプ・オブ・ウォーター
歌曲賞:「グレイテスト・ショーマン」より"This Is Me"
今年最高の台詞:「俺はガンダムで行く!」(レディ・プレーヤー1
 

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U.S.A.〜大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート2018

12月21日(金)大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを第2部より聴く。指揮は梅田隆司先生。

今年の桐蔭吹部の躍進は凄まじかった。やはりその切掛を作ったのは甲子園における野球部の快進撃と、その応援であることは間違いない。

10月27日(土)、日本テレビ「嵐にしやがれ」で吹奏楽部が取り上げられ、櫻井翔が大阪桐蔭高校に来校した。

11月に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」では20世紀フォックスの公式MVで桐蔭が演奏した。

11月15日(木)は読売テレビ「ベストヒット歌謡祭 2018」でDA PUMPとコラボ、大阪城ホールで「U.S.A.」を演奏。12月11日にはNHK「わが心の大阪メロディー」に出演し、再びDA PUMPと「U.S.A.」を共演した(@NHK大阪ホール)。

またDREAMS COME TRUEがNHK朝ドラ「まんぷく」で歌った〈あなたとトゥラッタッタ♪〉のシングルでも桐蔭が演奏している(こちら)。

さて、サンタコンサートはマーチングから始まった。

  • ヴェルディ:歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • ジョン・ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ」
  • ミシェル・ルグラン:映画「ロシュフォールの恋人たち」より
    〈キャラバンの到着〉

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桐蔭の〈キャラバンの到着〉はパンチが効いていて、何度聴いても感動する。紛うことなきルグランの最高傑作。

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最早〈銀河鉄道999〉と並び、彼らの十八番(おはこ)と呼んでも過言ではないだろう。

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次に、

  • アラン・メンケン:映画「美女と野獣」
  • 甲子園リクエストコーナー:あんたの花道(天童よしみ)

「美女と野獣」で梅田先生は手にバラを持って指揮された。

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ここでリクエストコーナー。大阪桐蔭野球部の生徒が登場し、バットで打ったボールを掴んだ観客が曲目リストの中から選ぶ仕組み。

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まず選ばれたのは、

  • クロード=ミシェル・シェーンベルク:ミュージカル「レ・ミゼラブル」
続いて、
  • サンタが街にやってくる In Swing
  • エルトン・ジョン、ハンス・ジマー:映画「ライオンキング」(リクエスト)
  • タケカワ・ユキヒデ(樽屋雅徳 編):銀河鉄道999

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ここで第2部終了。休憩をはさみ第3部へ。

  • ウィンター・ワンダーランド In Swing

ノリノリで最高!

梅田先生が嵐の「翔ちゃん」が桐蔭にやって来た時のエピソードを語った後に、

  • 嵐メドレー
  • Linked Horizon:アニメ「進撃の巨人」から〈紅蓮の弓矢〉
  • シャーマン兄弟:メリー・ポピンズ(リクエスト)
  • ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(リクエスト)

「メリー・ポピンズ」は久しぶりということだったが、僕は昨年のサンタコンサートのリハーサルでちょっと聴いただけで、本番での演奏は初体験。すっごく良かった。

「ラプソディ・イン・ブルー」は冒頭のクラリネット・ソロが滅茶苦茶上手い!プロ顔負け。Jazzyでgroovy。うねりがあって雰囲気抜群だった。

  • 葉加瀬太郎:情熱大陸

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そしてDA PUMPの「U.S.A.」登場!

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男子6人が踊った。

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最後は定番/鉄板のアンコール、

  • 銀河鉄道999
  • ディズニー映画「ピノキオ」から〈星に願いを〉

で〆。

余談だがスティーヴン・スピルバーグ監督が今まで撮った映画の中で、彼自身が脚本を書いた作品が2つだけある。「未知との遭遇」と「A.I.」である。そして面白いことに、どちらもピノキオが登場する(「未知との遭遇」には〈星に願いを〉の旋律も流れる)。手塚治虫「鉄腕アトム」もピノキオをベースにしており、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー作品賞・監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督は次回作として「ピノキオ」を準備中だ(Netflixで配信予定)。またピノキオは旧約聖書のヨナ記と深い関係がある。

今回ちょっと残念だったのはクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が聴けなかったこと。でも多分、来年2月17日の定期演奏会で演奏してくださいますよね、梅田先生?

ところで桐蔭には是非、BSテレ東の番組「エンター・ザ・ミュージック」(HPはこちら)に出演してもらいたいなぁ、と以前から考えている。関西フィルの正指揮者・藤岡幸夫さんが司会を務め、世界的なサクソフォン奏者・須川展也さんと藤岡さんが全国各地の吹奏楽団を訪問する企画があるんだ。既に千葉県の市柏とか福岡県の精華女子が出演している。藤岡さんは熱血漢で面白い人だし、須川さんと共演出来たらバンドにとって大きな財産になると思うんだよね。

また来年聴きたい曲のリクエストとして、2月1日(金)に公開されるディズニー映画「メリー・ポピンズ・リターンズ」と、7月19日(金)に公開される新海誠監督「天気の子」(公式サイトはこちら)の主題歌(今回組むバンドは未発表)を挙げておく。

「メリー・ポピンズ」の作曲はシャーマン兄弟だが、「リターンズ」で作詞・作曲したのはスコット・ウィットマンとマーク・シェイマン(ふたりは公私共にパートナーである)。このコンビによるブロードウェイ・ミュージカル「ヘアスプレー」はトニー賞を受賞した。他にミュージカル「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」や「チャーリーとチョコレート工場」がある。

僕が最初にマーク・シェイマンの才能に刮目したのはメグ・ライアン、ビリー・クリスタル主演の映画「恋人たちの予感」(1989)。卓越したジャズ・アレンジが実に心地よかった。で、皆さんに是非観て頂きたいのが「サウスパーク/無修正映画版」(1999)!全編ミュージカル仕立てで、アカデミー歌曲賞にノミネートされた"Blame Canada"(すべてカナダのせいにしろ!)は笑える。特に最高なのは「レ・ミゼラブル」のパロディ"La Resistance"。抱腹絶倒間違いなし。トレイ・パーカー監督のミュージカル愛が溢れ出す。因みにトレイ・パーカーは後にブロードウェイに進出し、ミュージカル「ブック・オブ・モルモン」(2011年初演)でトニー賞9部門を独占した。

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ビヨンセからレディー・ガガへ〜映画「アリー/スター誕生」

評価:A+ 公式サイトはこちら

Star

まずはこちらからお読みください。

上の記事に書いたとおり、「スター誕生」4回目の映画化である。

僕が今回のリメイクの話を聴いたのは2011年だった。その頃はクリント・イーストウッド監督ビヨンセ主演で企画が動いていた。

ところが!撮影直前になってビヨンセの妊娠が発覚、完全に白紙撤回になってしまった。つまりビヨンセは自分の女優としてのキャリアよりも、「女の幸せ」を選択したのだ。プロ意識が欠けた、大馬鹿者である。同時期にビヨンセ主演でディズニー・ミュージカル「アイーダ」映画化という構想もあったが、こちらもポシャってしまった。彼女の罪は重い。

不意打ちを食らった気の毒なイーストウッドは完全にこのプロジェクトに興味を失い、彼が監督した映画「アメリカン・スナイパー」で主演を務めたブラッドリー・クーパーに譲ってしまう。しかし以前からミュージカル映画を撮りたいと考えていたイーストウッドは代わりにブロードウェイ・ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」を映画化し(2014年)、キネマ旬報ベスト・テンでその年の外国映画ベスト・ワンに選出された。

ブラッドリー・クーパーは主演と監督を兼任することになり、ヒロインにレディ・ガガを決めたとき、イーストウッドに報告に行ったそうである。その時、言われたのは「やめとけ」。後に完成した映画を観て、イーストウッドは自分が間違っていたことを素直に認めた。

僕は2度目の映画化、ジョージ・キューカー監督ジュディ・ガーランド主演のバージョンがとても好きである。特にジュディがバンドの仲間たちと"The Man That Got Away"を歌っているときに、ジェームズ・メイソンが店に入ってくる場面は何度観ても痺れる(動画はこちら)。そしてデイミアン・チャゼル監督はこの名シーンを映画「ラ・ラ・ランド」で再現している(男女入れ替わりバージョン→こちら)。「アリー/スター誕生」ではガガがゲイ・クラブでシャンソン「バラ色の人生」を歌う場面に相当する。

ガガは若い頃、ストリップクラブで働いていたことがあり、劇中で彼女は音楽プロデューサーから「君は鼻が高すぎるからスターになれない」と言われたと語るが、これも彼女の実体験である。また「私が書いた曲」と歌い出す"Shallow"(浅瀬)も実際にガガの作詞/作曲である(アカデミー歌曲賞受賞、間違いなし)。つまり本作は虚実の皮膜を縦横無尽に行き来するスリリングな構造になっており、そこがガガの強み。アカデミー主演女優賞、本当にいけるんじゃないかな!

ブラッドリー・クーパーは本作に取り組む前に全く歌ったことがなかったそうなのだが、どうしてどうしてじっくり聴かせるし、プロの歌手そのものだった。役者って凄い!

またクーパーの腹違いの兄を演じたサム・エリオットがいい味出しているんだ。

キャメラは常に主人公たちを半径1m以内から捉えており、殆どがクローズ・アップからバスト・ショットまで。その近接性が独特の個性を醸し出していた。

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