2009年11月21日 (土)

映画「スペル」

評価:B

Dragmetohell

「スペル」って「綴り」じゃないよ、「呪文」の方。でも原題は全然違っていて、"Drag Me to Hell" …つまり「私を地獄に連れてって(引きずり込んで!)」ってとこかな。オフィシャル・サイトはこちら

サム・ライミは、本来B級映画で力を発揮する人だと想う。僕にとって彼はやはりデビュー作「死霊のはらわた」(1981)の監督であり、「XYZマーダーズ」('85)とか「ダークマン」('90)みたいな悪趣味で馬鹿馬鹿しい映画を撮っている初期の彼が好きだった。「シンプル・プラン」('98)の頃から柄にもなく作風が格調高くなってきて、大作「スパイダーマン」シリーズになると全く魅力が感じられなくなった。しかし「スパイダーマン3」でひと段落着いて、ライミが初心に帰るというか低予算でリラックスした気持ちで撮ったのが本作である。

冒頭、昔のユニバーサル映画のロゴから始まるのが何とも粋である。ヒッチコックが「裏窓」「めまい」「鳥」を撮っていた頃のものだ。ユニバーサルといえば怪奇映画。ここにも原点回帰の志向が現れている。

いや~、何なんだろうこの心地よさは!「スペル」にはB-Movieの懐かしい匂い・魅力が満載である。程よい下品さ(いかがわしさ)、チープなプロット(見え見えの伏線)、こけおどしのショッカー演出、見たこともない冴えない役者たち。クリストファー・ヤングの饒舌な音楽も凄く良かった。

考えてみればクリストファー・ヤングは清水崇監督のハリウッド進出作「THE JUON 呪怨」の音楽も担当していたが、その製作総指揮をしたのがサム・ライミだった。

本作では《B級映画の心意気》を久しぶりに堪能させてもらった。映画が終わり、場内が明るくなる直前の暗闇の中、僕は小さく呟いた。「おかえり、サム・ライミ。Welcome!」

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フォルテピアノってご存じですか?/ハイドン&モーツァルトの楽しみ

仕事を終え音楽会に行く前に阿倍野の明治屋で一杯。ここは何とも雰囲気のある店だが、地区の再開発で移転が決まっている。きずしや、だし巻きが美味しい。だしの効いた湯豆腐もいける。

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それから歩いて「やまちゃん」でクリーミーなたこ焼きに舌鼓を打つ。今日はB級グルメの日。

さて、近鉄電車に乗り換え大阪府松原市「ゆめニティプラザ」へ。

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フォルテピアノ:高田泰治、ヴァイオリン:大谷史子延原武春/テレマン・アンサンブルの演奏で、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
  • モーツァルト/きらきら星による変奏曲
  • ハイドン/ソナタ 第39番 ト長調 Hob.XVI-39
  • モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
  • モーツァルト/ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414

アンコールは、

  • モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K.136〜第1楽章

モーツァルトの3つのディヴェルティメント(嬉遊曲)K.136-138はいずれも16歳の年にザルツブルクで書かれている。特にK.136は有名で、第1楽章はTV「のだめカンタービレ in ヨーロッパ」でも使用された。今回はガット弦が張られたクラシカル楽器による演奏。ピッチはA=430Hz(モダン楽器はA=442前後)。

きらきら星による変奏曲」はフォルテピアノ独奏。使用されたのはモーツァルトが生きていた時代、ウィーンで活躍したアントン・ヴァルターが製作した楽器のレプリカ。典雅な響き。膝レバーによる音色の変化が、また魅力的である(膝レバーの解説、写真は→こちら)。

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現在も定期的にドイツに渡り、ミュンヘン音楽大学のクリスティーネ・ショルンスハイムからフォルテピアノ&チェンバロの薫陶を受けている高田さん。本来彼の資質である端正で気品のある(貴族的な)弾き方に加え、最近では華やかなタッチがそれに花を添えるようになってきた。素晴らしいモーツァルト&ハイドンであった。

モダン楽器でヴァイオリン・ソナタを聴くと、ヴァイオリンとピアノが「対立する」(against, vs.)という印象を受けるが、フォルテピアノとクラシカル・ヴァイオリンだと「共に歩む」(walk together)とか「調和する」(be in harmony with)とかいった言葉が最も相応しい気がする。やはりモーツァルトも作曲された当時の演奏様式で聴かないと、そこから零れ落ちてしまうものが間違いなくあるのだなということを痛感した。

延原さんのお話によるとモーツァルトは依然人気があるが、ハイドンだけでコンサートのプログラムを組むとお客さんが全然来てくれないそうである。「一番人気がない作曲家って分かります?テレマンなんです」

また今回演奏されたピアノ協奏曲は今月末にNHKで映像収録され、BS「クラシック倶楽部」で放送される予定であること、さらに来年、日本初の試みとして高田さんのフォルテピアノでモーツァルト/ピアノ協奏曲全曲演奏会シリーズをする予定との発表もあった。これは実に愉しみだ。

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2009年11月20日 (金)

ポーランドの俊英アーバンスキのショスタコ10!/大フィル定期

大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の定期演奏会を聴きにザ・シンフォニーホールへ。

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指揮台に立ったのはポーランド生まれのクリストフ・アーバンスキ、27歳である。ピアノ独奏はペーテル・ヤブロンスキで、

  • キラル/オラワ
  • ショパン/ピアノ協奏曲 第2番
  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第10番

現代ポーランドを代表する作曲家キラルの曲は、ミニマル・ミュージックの手法で書かれ、フィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒ、マイケル・ナイマン、久石譲などの作風を彷彿とさせる。しかしその響きはグレツキ(悲歌のシンフォニー)に通じるものがあり、やはりポーランド人の血だなぁと想った。舞曲風で分かり易く、親しみやすい小品だった。弦楽合奏なのだが、最後は奏者全員の掛け声"HEY !"も飛び出した。まるで淀工の「カーペンターズ・フォーエバー」みたい。

スウェーデン生まれのピアニスト・ヤブロンスキは優しいタッチで弾き始め、決して切れがあるとかメリハリのあるとは言えないけれど、音の一粒一粒が際立ち、キラキラ輝いているような演奏だった。アンコールは繊細なショパン/マズルカ

ショスタコーヴィチ交響曲第10番は謎めいた曲である。スターリンが死去した1953年に着手されたこのシンフォニーはソロモン・ヴォルコフ著「ショスタコーヴィチの証言」によると「スターリンとその時代を描いた」ものだそうだ。しかし現在ではこの回想録の信憑性そのものが疑われており、真実は闇の中である。

また全体を通じてDmitrii SCHostakowitchのイニシャルからとったDS(Es)CHの音形(レ・ミ♭・ド・シ)が重要なモチーフ(モノグラム)として用いられている。こうして考えると、スターリンに翻弄された自己を投影しているとも解釈出来る。

ヘルベルト・フォン・カラヤンは生涯に2度、この第10番をスタジオ・レコーディングしている。しかし帝王カラヤンがショスタコーヴィチの他の交響曲を録音したことは一切ない。この理由もよく分からない。

Kara
上の写真は1969年5月29日、モスクワ音楽院大ホールにおけるカラヤンとショスタコ。この日のプログラムも第10番だった。

キラルショスタコを暗譜で振ったアーバンスキは曲を自家薬籠中のものとしており、見事な統率力でオケを引っ張った。大フィルも機動力をフルに発揮し、普段の実力以上のものを出し切っていたように見受けられた。特にシンフォニー第2楽章の疾走感は凄かった。

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2009年11月18日 (水)

月亭遊方のゴキゲン落語会(11/17)

ワッハ上方4F展示室内にある上方亭へ。ワン・アンド・オンリー、月亭遊方さんの会。

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演目は、

  • 幕開前戯噺
  • 多国籍酒場へよぉーこそ!
  • 絶叫ドライブ〜彼女を乗せて〜(ゴキゲンバージョン)
    (以上、遊方 作)

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幕開前戯噺」(トークショー)では遊方さんの日常をあれこれと。桂米朝さんが文化勲章を受章したお祝いの会が太閤園で開催され月亭も可朝さん以下、方正(山崎邦正)さんまで駆けつけたのに、遊方さんは笑福亭福笑"祝"還暦落語会(←僕もその場にいた)の大喜利出演が既に決まっていたので行けなかったこと。結局その日はさくら水産で打ち上げし、朝までカラオケに付き合ったことなどを面白可笑しく語られた。

また所属する吉本興業が有史以来初めて落語プロジェクト・チームを立ち上げ、本腰を入れてきたことを紹介(DVDも発売される→こちら)。遊方さんは、これからの3年に勝負をかけるとの決意表明も飛び出した。

多国籍酒場へよぉーこそ!」は、とある日本語学校の向かいのバーで展開される、国籍が入り乱れた人生模様を描く(ある意味「グランド・ホテル」形式と言えるかも)。十年ほど前に遊方さんは学校講演+落語をすることになり、「人は見かけだけで判断しちゃいけない」という人権教育を盛り込んで作った噺とか。とはいえ、そんな堅苦しい要素はからきし無し。沢山の人々がガヤガヤ賑やかに登場し、カラッとした作品に仕上がっていた。

絶叫ドライブ〜彼女を乗せて〜」は免許取り立ての若い男が、彼女を誘って初ドライブする状況下に巻き起こるドタバタ(スラップスティック)・コメディ。遊方さんはゴキゲンに飛ばして絶好調。スピード感ある愉しい高座を満喫した。

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2009年11月17日 (火)

立川談春・桂文珍/京橋精選落語会

よしもとの小屋、京橋花月へ。

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桂 文珍さんがプロデュースする落語会の第一回目。満席で当日券は立ち見のみ。前回ここを訪れた時は余りの客層の悪さに閉口したが、今回は「場内飲食禁止」「途中入退場お断り」などをアナウンスしており、心地よい雰囲気で聴けた。

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  • 月亭  八光/ちりとてちん
  • 桂     文三/芋俵
  • 立川  談春/夢金
  • 笑福亭三喬/べかこ
  • 桂     文珍/らくだ

まずは文珍さんが登場し、ご挨拶。「私が仕分け人です」と。吉本興業所属の落語家だけではなく、米朝事務所、松竹芸能、無所属、そして東京の噺家も含めボーダレスで今一番輝いている人、旬な人に出演してもらえる会にしたいと趣旨説明された。今後、年二回くらいのペースを予定しているそう。「しかしセレクト・ショップの筈なのに、なぜ八光が入っているのか疑問に想われる方もいらっしゃるでしょう」ここで場内大爆笑。

その八光だが、マクラで西川きよしさんのエピソードを披露。これが実に詰まらん。ペケ×

文三さんは機嫌良いアホたちが賑やかに、陽気で愉快な一席。

東京からのゲスト、談春さんはマクラを振らず一気に噺の世界へ。この人は情景描写が卓越していてグイグイ惹き付ける力がある。雪が降りしきる深閑とした寒さが客席までしっかり伝わってきた。気迫があり絶品。僕は江戸落語は基本的にくだらないと想っているけれど、(柳家)喬太郎と談春は違う。このふたりは別格だ。

仲入りをはさみ、「松竹芸能の三喬です。今日はアウェイの仕事なので緊張しています」と開口一番。「文珍師匠のお陰でベルリンの壁が崩れました。その瓦礫に埋もれないよう頑張ります」……などと三喬さんは殊勝な発言をしながらも、噺の中で興行主が「ギャラの7割を搾取する吉本みたいなえげつないことはしないから」というくすぐりを入れたりして、中々したたかである。

トリの文珍さんもマクラ抜きで大ネタ「らくだ」へ。独自の工夫が色々あって聴き応えたっぷり。大変充実した会であった。

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2009年11月16日 (月)

AKASO 笑KASO 〜音と笑いを工事中〜

大阪・梅田のライブハウス「umeda AKASO」へ。

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ここでは初となる落語イベントが開催された。客の入りは60人くらい。

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前半の演目は、

  • 林家市楼/ちりちり(小佐田定雄 作)
  • 笑福亭笑子/腹話術
  • 桂三金/奥野君のコンパ(三金 作)
  • おしどり/音曲漫才
  • 笑福亭鶴笑/ザ・サムライ(パペット落語)

市楼さんは遣唐使の時代を舞台に、嘘を言うとちりちり鳴り出す茶がまで失敗し、讃岐に左遷されてしまう御公家さんの噺。

笑子さんの腹話術は繁昌亭では座ってやるが、今回はスタンディングで。マイケル・ジャクソンの"HEEL THE WORLD"や"BEAT IT"も飛び出した。技術は確かなのだが、まだ客のハートを掴めていない感じ。

奥野君とは三金さんの本名である。

おしどりはケンが針金アートをし、マコがアコーディオンを演奏。マコの唄うシャンソンが本格派でびっくりした。上手い。レッド・ツェッペリンの「天国への階段」ならぬ、替え歌「天六への階段」(天六=地下鉄「天神橋筋六丁目」駅)とか「ケ・セラ・セラ」など可笑しかった。最後はケンが電子楽器テルミンを持ち出し、マコのアコーディオンとピアソラの「リベルタンゴ」を演奏。この発想、センスには脱帽だ。なんて洒落たコンビなんだろう!いっぺんにファンになった。関西芸人の奥深さを知る。

Theremin

鶴笑さんは浅草・東洋館(HPはこちら)に出演する不思議な芸人さん達のエピソードをマクラに。やっぱり彼のパペット落語は最高に面白い。インターナショナルに通用する笑いである(以前はロンドンを拠点に活動)。さすが世界のKakushow !ちなみに弟子の笑子さんはシンガポールで彼の芸を見て惚れ込み、入門したそうな。

仲入り後、ゲストパーカッション奏者・中村岳さんを交え全員でパフォーマンス。工事現場を舞台に、色々な小道具で音を出しリズムを取るSTOMP(公式サイトはこちら)みたいな感じ。中々愉しいショーだった。

これで入場料2,000円+ドリンク代500円(アルコールあり)は安い。是非第2弾の企画を期待したい。

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2009年11月15日 (日)

マーチングへ行こう! 

 クラシック音楽ファンというのは概ね、偏狭な趣味の持ち主である。例えばオーケストラは聴くが、室内楽とかオペラは全く聴かないという人が多い。またモーツァルトからマーラーの時代までは聴くけれど、バッハ以前、あるいは20世紀以降の作品は敬遠するというのが8割方の態度である。まして「吹奏楽なんか」、絶対に聴かない。この世の中には美しい音楽がもっともっと沢山あるのに、本当に勿体ない話である。

吹奏楽ファンというのも実に不思議(不可解)な人々である。東京佼成やシエナ、大阪市音楽団などプロの演奏会や吹奏楽コンクールには足を運ぶけれど、マーチングは観ないという輩が少なからずいるのである。僕にはこの態度が全く理解が出来ない。

吹奏楽(ウィンド・オーケストラ)というのは実は歪な編成である。20世紀よりも前にこの編成で書かれた作品が殆どないということが、なによりの証拠である。ではどうして今日まで発展してきたのか?それはこのジャンルが軍楽隊の行進曲から派生してきたことと無関係ではない(弦楽器は屋外の行進には全く向かない)。つまりマーチングこそ吹奏楽の原点、神髄なのである。

マーチングは観て愉しい、聴いて愉しい素敵なジャンルである。是非もっと多くの人々にこの魅力を体感して欲しいと願う。

さて、来たる11月29日に大阪城ホールで全日本マーチングコンテストが開催される。選りすぐりの団体が全国から集う。チケット入手方法など詳細は→こちら

どんな雰囲気かお知りになりたい方は、僕が以前書いた見聞録をご覧頂きたい。

さあ、マーチングへ行こう!

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