2024年3月 1日 (金)

夜明けのすべて

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評価:A

Yoake

今から三十数年前、大学生の時に僕は映画館で『恋人たちの予感』(1989)を観た。(「ラブコメの女王」と呼ばれた)絶頂期のメグ・ライアンは光り輝くばかりにキュートで、監督のロブ・ライナーも脚本のノラ・エフロンも大好きなのだが、一つだけどうしても許し難い点があった。冒頭で〈恋愛感情抜きに男女の友情は成立するのか?〉という問題提議がされるが、最終的にハリー(ビリー・クリスタル)とサリー(メグ・ライアン)はセックスする。つまり〈男女の友情など成立し得ない〉という結論を出されたわけで、とてもショックだった。

この心的外傷は癒えぬまま歳月が過ぎていったが、そこへアイルランドから颯爽と登場したのがジョン・カーニー監督である。2007年に公開された『ONCE ダブリンの街角で』や後の『はじまりのうた』で見事に恋愛抜きの男女の友情を描いてくれて、溜飲が下がった。

そして恐らく『恋人たちの予感』が投げかけた問いに対する日本からの初めての回答が『夜明けのすべて』なのではないだろうか?

〈他者の心を理解することは不可能だけれど、その人に寄り添い、歩調を合わせることは出来る。それは男女を問わない〉というテーマがひしひしと胸に迫る。遺伝子を残すための本能としての求愛ではなく、思いやりから生まれる行動こそが人の人たる所以(ゆえん)だろう。

ゆったりと時間が流れる中、声高ではなく静かな波のように心を洗ってくれる、そんな素敵な映画だと思う。

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2024年2月28日 (水)

祝・読売演劇大賞受賞!藤田俊太郎(演出家)

第31回読売演劇大賞に演出家・藤田俊太郎が決まった。対象となった作品は『ラビット・ホール』と『ラグタイム』。詳細はこちら

また、『ラグタイム』で舞台美術を担当した松井るみが最優秀スタッフ賞を受賞した。おめでとうございます。

僕は『ラグタイム』を2023年10月5日および7日に観劇し、劇評を下記事に書いた。

 ・ 石丸幹二・安蘭けい・井上芳雄 /ミュージカル「ラグタイム」待望の日本初演!

何故アメリカ初演から日本初演まで25年掛かったのか、藤田の演出の何が凄かったのかについて詳しく述べている。ミュージカルに興味のある方はご一読ください。

また藤田が演出した他の作品のレビューは以下の通り。

 ・ 中川晃教(主演)ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」 2022.12.16
 ・ 城田優(主演)ミュージカル「NINE」 2020.12.10
 ・ ブロードウェイ・ミュージカル「ピーターパン」(+昨年の大事故について) 2017.08.15

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2024年2月14日 (水)

From Screen to Stage and back to Screen ミュージカル映画「カラーパープル」(1985年に渦巻いた壮絶なハラスメントについても語ろう)

評価:A+

1985年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『カラーパープル』は猛烈なハラスメント(いじめ/嫌がらせ)の嵐に晒された。今でこそスピルバーグは押しも押されもせぬ大監督として世間から認知されているわけだが、当時はそうでなかった。1975年に『ジョーズ』、1981年に『レイダーズ/失われたアーク《聖櫃》』、そして82年に『E.T.』を撮り爆発的なヒットを連発、同業者から激しい嫉妬を買い「あいつは娯楽映画ばかり撮っている金の亡者」的に見られていた。つまり頑なにスピルバーグ映画の芸術性は認めないぞという雰囲気がハリウッドでは支配的だったのである。例えるならAKB48や坂道シリーズ(乃木坂・欅坂→櫻坂・日向坂)でボロ儲けした秋元康が「秋豚」と蔑称され、作詞家としての彼の才能が軽んじられている日本の現状に似ているだろう。

 ・ 秋元康プロデュース・欅坂46「サイレントマジョリティー」を讃えて(あるいは、アメリカの闇)
 ・ 【増補改訂版】「君の名は希望」〜作詞家・秋元康を再評価する

『E.T.』は米アカデミー賞で作品賞・監督賞にノミネートされたが、受賞したのはリチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』だった。

Purple

スピルバーグはどうしてもオスカーが欲しかった。そこでアリス・ウォーカーの小説に目をつけた。しかしメイン・キャストがほぼ黒人で、白人が殆どで出てこない『カラーパープル』を白人が監督することに批判が集まった。結局アカデミー賞では作品賞を含む10部門11ノミネート(助演女優賞が重複)されたにもかかわらず、なんとスピルバーグは監督賞候補に入らなかった。そして蓋を開けてみると受賞ゼロ、全滅だった。正に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」だ。そんな風に当時のハリウッドは悪意に満ち溢れていた。結局、作品賞・監督賞を制覇したのはシドニー・ポラックの『愛と哀しみの果て』。凡庸な駄作である。

僕は『未知との遭遇 特別編』(1980)以降、スピルバーグの全映画を公開時に映画館で観ており『カラーパープル』も例外ではない。大いに気に入り、後にレーザーディスク(LD)も購入した。

ここで日本の雑誌「キネマ旬報」1986年度 外国語映画ベストテンを見てみよう。第3位が『蜘蛛女のキス』(アカデミー作品賞・監督賞ノミネート)、第6位が『カラーパープル』、そして『愛と哀しみの果て』が12位。この評価からも分かる通り、アカデミー史上最悪のミスジャッジであった。余談だがミスジャッジで思い出すのが1998年に公開された『恋におちたシェイクスピア』でグウィネス・パルトロウが主演女優賞を受賞した「とんでも事件」。この年は『エリザベス』のケイト・ブランシェットや『セントラル・ステーション』のフェルナンダ・モンテネグロが候補だったわけで、グウィネスというのはどう考えてもあり得ない選択だった。その後"MeeToo"運動を経て、『恋におちたシェイクスピア』のプロデューサーだったハーベイ・ワインスタインが告発され逮捕(禁固刑は合計39年を言い渡された)。グウィネスが証言するかどうかが焦点となり、遂に彼女が受賞したからくりが判明したというわけ。閑話休題。

 ・ 映画「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」 2023.02.07

漸くスピルバーグ映画がアカデミー作品賞・監督賞を受賞するのは『シンドラーのリスト』(1993)である。これはホロコーストを描いた作品であり、ハリウッドの重役にユダヤ人が多いことは周知の事実(ワインスタイン兄弟もユダヤ人)。有無を言わせぬ鉄板ネタであった。

『カラーパープル』はウーピー・ゴールドバーグの映画デビュー作で、僕はこれでアカデミー主演女優賞を受賞すべきだったと今でも思っている。結局彼女は『ゴースト/ニューヨークの幻』の胡散臭い女霊媒師役で助演女優賞を受賞するのだが、まぁこれは「あの時あげられなくてゴメンね。これで堪忍して」といった残念賞的意味合いが強かった。因みにウーピーはTV界のEmmy(エミー賞)、音楽界のGrammy(グラミー賞)、映画界のOscar(アカデミー賞)、そして舞台のTony(トニー賞)というエンターテイメントの最高峰に位置する栄冠を4つとも受賞したEGOTであり、現時点でEGOTを達成したのはオードリー・ヘップバーン、リチャード・ロジャース、メル・ブルックス、アンドリュー・ロイド・ウェバー、ジェニファー・ハドソン、ジョン・レジェンド、エルトン・ジョンら19人しかいない。

『カラーパープル』は2005年にブロードウェイでミュージカル化され、その10年後にシンシア・エリヴォ、ジェニファー・ハドソン主演で再演。第70回トニー賞ではミュージカル・リバイバル作品賞とミュージカル主演女優賞(シンシア・エリヴォ)の2冠に輝いた(『ハミルトン』が11部門攫った年だ)。シンシア・エリヴォは2019年に映画『ハリエット』に出演しアカデミー主演女優賞にノミネートされ、主題歌も歌った。現在はミュージカル映画『ウィキッド』を撮影中(エルファバ役)。

今回の映画はこのブロードウェイ版に基づいている。製作にスティーヴン・スピルバーグ、クインシー・ジョーンズ(前作で音楽を担当)、オプラ・ウィンフリー(前作でソフィアを演じアカデミー助演女優賞候補に)らが名を連ね、製作総指揮には原作者アリス・ウォーカーの名前も。監督はブリッツ・バザウーレ、ガーナ出身だそう。上映時間141分で、なんと85年版の154分より短い!

製作陣にウーピーの名前がないから彼女は本作に思い入れがないのかな?残念だなと思っていたら、本編を観るとカメオ出演していたのでむっちゃ嬉しかった。

率直な感想。スピルバーグ版よりもミュージカル版の方が良かった。上映時間が短いことからも分かる通り展開が早いし、何よりミュージカル・シーンが素晴らしい。歌も、踊りも。ゴスペル(アフリカ系アメリカ人によって生み出された教会音楽)とかブルースが、黒人たちの辛い労働・日常生活から生まれた「叫び」であることがとても良く理解出来る仕組みになっている。本作にとってミュージカルという形式が最も相応しかった、と言えるだろう。

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2024年2月 9日 (金)

哀れなるものたち

評価:A+

ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞。アカデミー賞では作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞など11部門にノミネートされている。これはクリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』の13部門に次ぐもの。映画公式サイトはこちら

Poor1 Poor2

R18+指定の本作を観終えた瞬間、僕は「セックスはスポーツだ!」と思った。既に『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞を受賞しているエマ・ストーンが「そこまでしなくても」と言いたくなるくらい全編に渡り脱ぎまくるわけだが、不思議と嫌らしさとか不快感はない。エマは今回プロデューサーも兼任しているわけで「男たちの欲望により、本人の意志に反して無理やり脱がされている」という雰囲気が全くないからだろう。むしろセックス・シーンは爽快に汗をかいているという開放感すらあった。

一体誰が「哀れなるものたち(Poor Things)」なのか?それは主人公ベラに対して、「父権主義」を振りかざす男たちのことだというのが僕の解釈だ。助平親父を演じたマーク・ラファロが秀逸。ベラを支配するつもりが精神的に急速に成長する彼女に置いてきぼりにされ、映画後半未練たらしくつきまとう姿は滑稽で爆笑した。今年のアカデミー助演男優賞候補の中ではアイアンマン(『オッペンハイマー』のロバート・ダウニー・Jr.)が優勢とされているが、超人ハルク(映画では三代目)も頑張れ!と応援したくなった。

ヨルゴス・ランティモス監督は『籠の中の乙女』『ロブスター』『聖なる鹿殺し』といったこれまでの作品で一貫して、父親・社会・神(『聖なる鹿殺し』でバリー・キオガン演じる謎の少年マーティン)といったものから一方的に押し付けられる不条理なルールに主人公が絡め取られ、苦悩する映画を撮ってきたわけだが、本作のベラは赤ん坊の脳を移植されることで「純粋無垢」という資質を獲得しており、そういった社会規範・コードから軽やかに抜け出してどんどん先に進んでいく。そこに監督が今回切り開いた新世界を見たし、〈エマ・ストーン〉力でもあるのかも知れない。

僕が今までで一番強烈な印象を覚えた映画のヒロインは中学生の時に初めて観た『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラで、彼女もアメリカ南北戦争当時の社会規範から逸脱した存在だ。あれから40年を経て、ようやくスカーレットに匹敵するキャラクターに出会えたと嬉しくなった。

あと、人工的な海に浮かぶ船を見て真っ先に連想したのが『フェリーニのアマルコルド』。帰宅し調べてみると案の定、監督が脚本家に渡した参考資料にフェリーニの『そして船は行く』が含まれていたという記事を見つけた(こちら)。

『哀れなるものたち』が持つフェリーニ的強烈な色彩感とか幻想性といった特徴は『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』には認められない。ベラ同様ヨルゴス・ランティモスも本作でNext Stageに突き抜けた!、と快哉を叫びたくなった。

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2024年2月 8日 (木)

三浦宏規(主演)フレンチロックミュージカル「赤と黒」(+フランスのミュージカル史について)

1月6日(土)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティへ。スタンダール原作のミュージカル『と黒』を観劇。

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作曲はウィリアム・ルソー&ソレル、演出はジェイミー・アーミテージ。2016年にパリで初演された。ウィリアム・ルソーは『1789 〜バスティーユの恋人たち〜 』にも楽曲を提供している(こちらのメイン作曲家はドーヴ・アチア)。

近年フランスでミュージカルは盛んに制作されており、代表的なものとして『壁抜け男』(1997)、『ノートルダム・ド・パリ』(1998)、『ロミオ&ジュリエット』(2001) 、『太陽王』 (2005)、『ロックオペラ モーツァルト』 (2009)、『1789 〜バスティーユの恋人たち〜』(2012)などが挙げられる。大ヒット・ミュージカル『レ・ミゼラブル』も元々は1980年パリ初演で、英語版がロンドンで上演されたのは1985年だ。

更に源流を辿れば、ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミ監督のコンビによるミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)、『ロシュフォールの恋人たち』(1967)、『ロバと女王』(1970)にたどり着く。ミシェル・ルグランの音楽は基本的にジャズのスタイルだが、21世紀に入ってからのフレンチ・ミュージカルの主流はロックンロールである。

ちなみにアメリカやイギリスでロック・オペラが流行ったのは1960年代後半から70年代前半にかけて。『ヘアー』(1967)、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971)、『トミー』(1975)がその代表格。一方、今ブロードウェイで一番ホットなのは天才リン=マニュエル・ミランダ(『イン・ザ・ハイツ』『ハミルトン』)の出現によりヒップホップ系かな。ただ日本人にとってこのジャンルは最先端過ぎて全くついて行けてないので(『ハミルトン』の上演すら実現していない)、フレンチ・ミュージカルあたりがちょうどいい塩梅なのだろう。日本語ラップが(少なくともミュージカル界で)定着するのに、まだ20年位はかかりそう。

出演は三浦宏規、夢咲ねね、田村芽実、東山義久、駒田一ほか。三浦は『テニスの王子様』『刀剣乱舞』など2.5次元ミュージカル出身で、イケメンで歌も上手かった。夢咲ねねは宝塚の娘役時代から大好きな女優で、美人だし文句なし!シンプルな装置で舞台転換が早く、演出も良かった。

本作は宝塚星組が礼真琴主演で先駆けて上演したのだが、宝塚版より今回の方に軍配を上げる。ちなみに宝塚歌劇には柴田侑宏が台本を執筆した別バージョンの『と黒』があり1975年に初演されている。菊田一夫版(1957年初演)もあるらしい。知らんけど。

今回鑑賞しながら「と黒」とは何を象徴しているのか?と色々考えを巡らせた。〈情熱愛欲↔信仰・禁欲〉でもあるだろうし、〈血の革命革新(radical) ↔権力・保守(conservative) 〉でもあるだろう。第一幕はブルジョワ・中産階級篇で、第二幕は貴族階級篇という構成になっているのが面白い。しかし、貧しい平民出身の野心家ジュリアン・ソレルはどちらの階級にも受け入れられず、弾き飛ばされてしまう。実に重層的で奥深い作品だ。

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2024年2月 6日 (火)

古川雄大・柚希礼音・真風涼帆(出演)ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』

梅田芸術劇場でミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』を観劇した。

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1月3日(水・マチネ)の役替り

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1月7日(日・ソワレ)の役替り

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脚本・演出は『エリザベート』『グレート・ギャツビー』『ポーの一族』で知られる小池修一郎、作曲は『1789 -バスティーユの恋人たち-』で小池と組んだドーヴ・アチア。モーリス・ルブランの小説「怪盗ルパン」シリーズを下敷きに、アルセーヌ・ルパン(古川雄大)とカリオストロ伯爵夫人(Wキャスト:柚希礼音/真風涼帆) 、令嬢クラリス(真彩希帆)、シャーロック・ホームズ(小西遼生)をはじめとした様々な登場人物たちが財宝を巡って様々な駆け引きを繰り広げる。さらに悪党(Villain)ボーマニャン役を立石俊樹が演じる。

年4月に宝塚大劇場で上演された小池修一郎(作・演出)『カジノ・ロワイヤル』のレビューで、「これはジェームズ・ボンドではなく内容的にアルセーヌ・ルパンものであり、宮崎駿の『ルパン三世 カリオストロの城』を彷彿とさせる作品だ」と書いた(ルブランの小説『カリオストロ伯爵夫人』についても言及)。

 ・ 真風涼帆/潤 花(主演)宝塚宙組「カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~」は駄作!(原作小説/映画版との比較あり) 2023.04.06

今回の新作の制作発表が行われたのはこの後であり、「やっぱり小池はアルセーヌ・ルパンや『カリ城』がやりたかったんだ!」と僕の直感が正しかったことが判明した。正直『カジノ・ロワイヤル』は救いようのない駄作だったが、本作はむっちゃ面白かった。2回観ても全く飽きない。

小池作品には『グレート・ギャツビー』『NEVER SAY GOODBYE』など〈文学系〉、『ヴァレンチノ』『カサブランカ』『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』など〈映画系〉、さらに『蒼いくちづけ』『ポーの一族』など〈耽美系〉と色々あるが、本作が一番近いのは98年宝塚宙組公演の『エクスカリバー 〜美しき騎士たち〜 』だろう。ズバリ〈脳天気/アホ系〉。エンターテイメント要素が満載、理屈抜きでディズニーランドのアトラクション的楽しさが味わえる。

テンプル騎士団の残した財宝の在り処を示す、生命の樹=メノラー(燭台)の失われた7本の枝を探すというプロットのバカバカしさ!!最高に可笑しい。アーサー王と円卓の騎士が聖杯を探す旅に出る物語を想起させ、その意味でエクスカリバーに繋がっているし、最後に聖杯を守る騎士が登場する『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』にも近い雰囲気と言えるだろう。つまり正真正銘冒険活劇だ。

カリオストロ伯爵夫人は〈男装の麗人〉という設定で登場するので、元・宝塚歌劇団の男役トップスターだった柚希と真風はピッタリ。甲乙つけ難かった。タンゴを踊る場面もあり格好いい!

また一幕最後はルパンがピカピカ光る蝶ネクタイ型ゴンドラに乗り空中浮遊する場面もあってサービス精神旺盛。『ポーの一族』の演出を想い出した。

再演があれば是非また観たい。

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2024年1月25日 (木)

礼真琴・舞空瞳(主演)宝塚星組「RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Bheem~」「VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)」

下記事も併せて是非お読みください。

 ・ 宙組の存亡をめぐって宝塚歌劇団への提言 (2023.12.15)

1月16日(火)宝塚大劇場へ。星組公演を観劇した。

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『RRR』は主人公を礼真琴、その好敵手を暁千星が演じる。娘役トップは舞空瞳。脚本・演出は谷貴矢(たにたかや)。谷は2011年に入団。21年花組「元禄バロックロック」で大劇場公演演出家デビューを果たし、これが2作目。原作は日本でも大ヒットしたインド映画で言語はテルグ語。

一言にインド映画と言っても実は色々あり、北インドのボリウッド(ヒンディー語)が年間で約400本ほど制作し、南インドのトリウッド(テルグ語)、コリウッド(タミル語)、モリウッド(マラヤーラム語)、サンダルウッド(カンナダ語)がそれぞれ約200本ほど制作しているという。『RRR』の主題歌「ナートゥ」はゴールデン・グローブ賞および米アカデミー賞で歌曲賞を受賞するという快挙を成し遂げた。非英語の歌が同賞を受賞するのは極めて珍しい。

舞台版も「ナートゥ」(日本語訳)を歌い踊るのが最大の見せ場。華やかで楽しく、気分は最高潮に。物語は熱く面白いし、音楽も踊りもこれまで宝塚ではなかったタイプで物珍しく、最後まで飽きさせない。ハイテンションで突っ走り、最後はもうお腹いっぱい。後半のショーなしで一本立てでも良かったんじゃないかと感じたが、なんと休憩の後にとんでもない体験が待ち受けていた!!今回の演目はむっちゃお得な組み合わせだ。

110年という長い宝塚歌劇の歴史の中で、ショーの最高傑作は恐らく鴨川清作(作)『ノバ・ボサ・ノバ』(1971年初演)だろう。多くのファンが同意してくれる筈。『ノバ・ボサ・ノバ』の舞台はブラジル、リオ・デ・ジャネイロでラテン系の作品だが、一方、ヨーロッパ的でシックなショーなら荻田浩一(作・演出)『パッサージュ -硝子の空の記憶-』(2001年雪組公演)にとどめを刺す。もう、夢のように美しい作品であった。しかしオギーは2008年に宝塚歌劇団を退職、最早あれ以上のものは観られないのでは?と半ば諦めかけていた。

ところが、今回『VIOLETOPIA』を観て腰を抜かした。素晴らし過ぎる!!演出家・指田珠子(さしだしゅこ)の大劇場デビュー作である。耽美で衣装や美術が洗練されており、うっとり見惚れた。サーカスの場面があったりして『パッサージュ』を彷彿とさせる。フェデリコ・フェリーニ(イタリア映画 『甘い生活』『8 1/2』『アマルコルド』『フェリーニの道化師』の監督)的幻想世界と言っても良いかも知れない。蜃気楼のような作品。

音楽のセンスも抜群。特にモーリス・ラヴェル(作曲)管弦楽のための舞踏詩 『ラ・ヴァルス』の使い方には唸らされた。またモノトーンの舞台で静かに鳴り渡るフランシス・レイ(作曲)『白い恋人たち』も心に染みる。

「もう宙組は消滅したっていい。ここに確かな希望、春の兆しがあるのだから」そう思った。

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2024年1月17日 (水)

映画「マエストロ:その音楽と愛と」のディープな世界にようこそ!(劇中に演奏されるマーラー「復活」日本語訳付き)

公式サイトはこちら

〈スピルバーグからブラッドリー・クーパーへ託された想い〉

映画"Maestro"は元々マーティン・スコセッシ監督が企画を温めていたのだが『アイリッシュマン』を先にすることになり、手が回らなくなった。 そこでスティーヴン・スピルバーグに白羽の矢が立った。スピルバーグは当初相当乗り気だったが、ブラッドリー・クーパーが監督・主演した『アリー/スター誕生』を観て考えを改めた。クーパーには傑出した演出の才能があるから彼に任せたらいいだろう、と思ったのである。これはブロードウェイ・ミュージカル『キャバレー』を鑑賞して、その演出家であるサム・メンデスを自分が企画を抱えていた『アメリカン・ビューティ』の監督に迎えたひらめきに似たものがある(それまでメンデスは映画を撮ったことがなかったが初監督作品でアカデミー賞を受賞した)。またスピルバーグ自身、長年温めてきた企画『ウエスト・サイド・ストーリー』再映画化を実現し、やりきったと満足したことも大きいだろう。

 ・【永久保存版】どれだけ知ってる?「ウエスト・サイド・ストーリー」をめぐる意外な豆知識 ( From Stage to Screen ) 2021.12.01
 ・ 
映画「ウエスト・サイド・ストーリー」(スピルバーグ版) 2022.03.10

こうして本作はスコセッシとスピルバーグが製作に回るという強力な布陣となった。

〈同性愛〉

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエストサイド物語』の作曲家で20世紀後半、ヘルベルト・フォン・カラヤンと並び立つ大指揮者でもあったレナード・バーンスタインが同性愛者であることは彼の生前から周知の事実であった。ただ僕がどうしても分からなかったのは、純粋に男だけが好きなゲイだったのか、バイセクシャル(両性愛者)だったのかということ。彼はフェリシアと結婚し子供を3人もうけた訳で、「本当に妻を愛していたのだろうか?、それともチャイコフスキーのように世間を欺くための〈偽装結婚〉に過ぎなかったのか?」というのが長らく関心事であった(チャイコフスキーの結婚生活はわずか6週間で破綻、彼は入水自殺を図る)。レニー(以下バーンスタインをこう呼ぶ)は最後までカミングアウトしなかったから。

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評価:A

2023年12月20日からNetflixで配信されているブラッドリー・クーパー脚本・監督・主演の映画『マエストロ:その音楽と愛と』を観て学んだこと。まず夫婦の関係というのは奥深く、本人にしか完全に理解するることが出来ないのだということ(「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と言うではないか)。本作から真っ先に連想したのはケヴィン・クラインが主演した2004年の映画『五線譜のラブレター』(傑作!)である。ミュージカルの作曲家コール・ポーター(『エニシング・ゴーズ』『ナイト・アンド・デイ』『ビギン・ザ・ビギン』)とその妻リンダの関係を描く作品で、コール・ポーターはゲイだったが、リンダは心底彼のことを愛していた。

学んだことの2点目。ゲイとバイセクシャルの境界は曖昧で、多分それを区別することに余り意味はないということ。両者は虹色のグラデーションのように切れ目なく繋がっていて、だから近年LGBTQ+という概念が生まれたのだろう。ただ困るのは〈LGBT→LGBTQ→LGBTQ+〉と用語が年々変わって(足されて)きて各種メディアでも表記がバラバラなので統一して欲しい。

〈映画の勝因〉

本作がどうして成功したかと言うと、やはり夫婦の関係に焦点を絞ったことにあるのではないだろうか。例えば『ウエストサイド物語』空前の大ヒットという史実をスッポリ飛ばしてしまっているのだが、これを物語に取り込んでしまうとテーマがボケてしまう。偉大な指揮者/作曲家の伝記を目的とする映画ではないのだ。面白いのはレニーとフェリシアの3人の子供たちがこの映画を支持し、ブラッドリー・クーパーに全面協力している点。例えばこちらの記事をご覧あれ。

三島由紀夫をゲイとして描いたポール・シュレイダー脚本・監督、緒形拳主演『Mishima』(1985)が三島家の逆鱗に触れ、日本公開はおろか未だに日本でDVD/Blue-rayを発売する目処も立っていないのとは対照的だ。

 ・ 幻の映画「Mishima」〜三島由紀夫とは何者だったのか? 2020.03.02

あとフェリシアを演じたキャリー・マリガンが心底素晴らしい!特筆に値する。是非、映画のエンド・クレジットに注目して欲しい。なんとブラッドリー・クーパーより先にキャリー・マリガンの名前が出てくるのだ。クーパーは優しい人だ。

〈レナード・バーンスタインの遺品を貰った日本人〉

レニーの遺品を譲り受けた日本人指揮者がふたりいることをご存知だろうか?まず大植英次がレニー生涯最後のコンサートで使用した指揮棒とジャケットを遺族から譲られており、佐渡裕はベストを貰った。下記事にその写真を掲載している。

 ・ バーンスタインに捧ぐ~佐渡 裕/PACオケ 定期 2008.11.25

〈最後の来日をめぐる大騒動〉

レニー最後の来日公演が開催された1990年、僕は大学を卒業したばかりで岡山県岡山市に住んでいた。7月20日京都会館での演奏会に行こうかどうしようか最後まで迷っていた。ロンドン交響楽団を指揮してブルックナーの交響曲第9番が予定されていた。しかしマーラーならいざ知らず、ブルックナーはレニーの得意分野ではない。交通費も馬鹿にならない。思慮に思慮を重ねた上で断念した(もしマーラーの9番だったら万難を排してチケットを購入しただろう)。結局レニーは東京公演の途中で体調を崩し、残る予定を全てキャンセルし帰国、京都公演はマイケル・ティルソン・トーマスが振り曲目も変更になった。東京公演ではレニーが指揮する予定だった「ウエス・サイド物語~シンフォニック・ダンス」を“弟子の若い日本人”が代演したため、払い戻しをする・しないで主催者側と聴衆のすったもんだが起こった事が大々的に報じられ、僕は新聞記事でそれを読んだ(後に当時無名の“若い日本人”指揮者が大植英次だったことを知る)。その年の10月14日にレニーは肺癌で亡くなった。映画の中でも描写されている通り、彼はヘビースモーカーだった。

  大植英次、佐渡 裕~バーンスタインの弟子たち 2008.02.29

〈ユダヤ人の血〉

レニーの父サムはロシアのウクライナに生まれたユダヤ人で、ユダヤ教のラビ(律法学者)を代々務める一家だった。彼は16歳の年に反ユダヤ主義が高まる祖国を出て単身アメリカに渡った(ウクライナのユダヤ人がどのように迫害されていたかは映画化もされたミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』を参照されたい)。サムは叔父の営む理髪店で働いた後にパーマネントなど美容器具販売業で成功を収めた。母ジェニーもウクライナ生まれで7歳の時にアメリカに移住、12歳から羊毛工場で働いた。ふたりは新大陸で出会い結婚、レニーが生まれた。そんな家庭だったから音楽とは縁がなく、父はレニーが音楽家になることに反対した。クレズマー(中欧や東欧に住むユダヤ人の伝統音楽)を演奏する哀れな辻音楽師(street musician)のイメージを持っていたからである。

レニーがユダヤ人作曲家マーラーの音楽に心酔していた理由や、自作の交響曲第1番『エレミア』でメゾソプラノがヘブライ語で歌うのはこうした背景がある。幼い頃、父親からみっちりタルムード(モーセが伝えた口伝律法)を仕込まれていたのだ。なお、世界で初めてマーラーの交響曲全集をレコーディングしたのは彼である。

〈鮮烈な楽壇登場〉

映画は1943年11月14日から始まる(日付はクレジットされない)。急病でキャンセルしたブルーノ・ワルターの代役としてぶっつけ本番でニューヨーク・フィルの指揮台に立ち、ラジオでも放送されていたこともありセンセーショナルなデビューを果たした。この日のプログラムは以下の通り。

 ・シューマン:マンフレッド序曲
 ・ミクロス・ローザ:主題、変奏曲と終曲 
 ・R.シュトラウス:ドン・キホーテ
 ・ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲

ここで留意したいのは真珠湾攻撃の後、第二次世界大戦最中の出来事だったということ。ドイツ・ベルリンに生まれたワルターはユダヤ人でウィーン国立歌劇場やウィーン・フィルでフルトヴェングラーと人気を争うほど活躍していたが、ナチス・ドイツの台頭でスイス経由でアメリカに亡命を余儀なくされた。ウィーンを去る直前の1938年に録音されたウィーン・フィルとのマーラー:交響曲第9番のライヴ録音は歴史的名演としてよく知られている。

またミクロス・ローザ(ロージャ・ミクローシュ)はハンガリー・ブタペストに生まれた。両親はユダヤ系の血筋で1939年ドイツに併合された祖国を離れ、ハリウッドで映画音楽作曲家になった。アルフレッド・ヒッチコック監督『白い恐怖』やウィリアム・ワイラー監督『ベン・ハー』などで3度アカデミー作曲賞を受賞。余談だがバレエ音楽『中国の不思議な役人』や『管弦楽のための協奏曲』で有名なバルトーク・ベーラもハンガリーに生まれた大作曲家で、第二次世界大戦が勃発しヒトラーを憎む彼は祖国を離れ渡米、貧困に喘ぎながら白血病に罹りニューヨーク州ブルックリンで亡くなった。そういう時代だった。閑話休題。

レニーはこのデビューをきっかけに1958年、アメリカ生まれの指揮者として史上初めてニューヨーク・フィルの音楽監督に就任することになる。それまではジョージ・セル(ハンガリー)やフリッツ・ライナー(ハンガリー)、ユージン・オーマンディ(ハンガリー)、アルトゥーロ・トスカニーニ(イタリア)、レオポルド・ストコフスキー(イギリス)といったヨーロッパ出身の指揮者たちがアメリカのクラシック音楽界を牛耳っていたのだ。

〈映画『波止場』とエリア・カザン〉

冒頭でティンパニの連打が高鳴る音楽はマーロン・ブランド主演、エリア・カザン監督の『波止場』。レニーが作曲した唯一の映画音楽(劇伴)である。どうしてこれしか携わらなかったのか?大植英次によると「勝手にミキサーで音量を調整されて自分が意図したものとは違う仕上がりになり、嫌気が差したんだ」と語っていたそう。赤狩りの最中、かつて共産党員だったカザンは「ハリウッド・テン」の仲間たちを売った“裏切り者”なので、レニーが当時何を考えていたのか興味深いところである。

 ・ 宮崎駿「風立ちぬ」とエリア・カザン~ピラミッドのある世界とない世界の選択について 2013.08.28

〈『ファンシー・フリー』から『オン・ザ・タウン』→『ウエスト・サイド物語』へ〉

続く新作の稽古場面。レニーが「ジェリー」と呼んでいるのは振付師ジエローム・ロビンスのこと。ここで制作進行しているのがバレエ『ファンシー・フリー』。1944年ニューヨーク・シティ・バレエ団が初演した。3人組の水兵が休暇で船を降りニューヨークを散策するという内容で、このプロットを発展させたのがブロードウェイ・ミュージカル『オン・ザ・タウン』である。そしてレニーとジエローム・ロビンスのコンビは後に『ウエスト・サイド物語』を生み出すことになる。

映画冒頭からレニーの恋人として登場するデイビッド・オッペンハイムは有名なクラリネット奏者で画家のエレン・アドラー(スタニスラフスキー・システムを継承する演技指導者ステラ・アドラーの娘)と結婚した。エレンが主催するホーム・パーティでレニーとフェリシアは出会う。その会場で「ベティとアドルフ」と呼ばれているのはベティ・コムデンとアドルフ・グリーンという作詞・脚本家のコンビ。『オン・ザ・タウン』の仕事がMGMの大プロデューサーであるアーサー・フリードの目に止まり、ハリウッドの招かれミュージカル映画『踊る大紐育』『雨に唄えば』『バンド・ワゴン』といった傑作群で共同脚本を執筆した。二人がパーティで歌っている"Carried Away"は『オン・ザ・タウン』のナンバー。なおアドルフ・グリーンは1989年、バーンスタインがロンドン交響楽団を指揮した演奏会形式のミュージカル『キャンディード』(全曲)上演にパングロス博士として出演しており、その様子はDVDで鑑賞することが出来る。

〈白黒から総天然色へ〉

映画は前半モノクローム映像だが半ばでカラーに切り替わる。その転換点で10年以上の歳月が一気に経過しているという構成だ。白黒の最後らへんに『ウエストサイド物語』(1957年8月初演)制作発表記者会見みたいな場面があるので恐らく1956年頃。総天然色になってすぐ、レニーの伝記を書こうとしている作家との対談で、「テレビ出演を始めてから15年、ニューヨーク・フィルの音楽監督になって10年」と言っている。最初のTV番組が「オムニバス(OMNIBUS)」で放送開始が1954年(有名な「ヤング・ピープルズ・コンサート」より前)、音楽監督就任が58年なので時代設定は1968−9年と推定される。この時レニーが作曲しているのは歌手、演奏者、ダンサーのためのシアター・ピース『ミサ曲』で1971年ワシントンのケネディ・センターで初演された。

 ・ バーンスタイン「ミサ曲」と「ジーザス・クライスト・スーパースター」 2017.07.15

〈マーラー:交響曲第5番〜アダージェットと『ベニスに死す』〉

モノクロームからカラーに切り替わる場面でレニーが指揮しているのがマーラー:交響曲第5番 第4楽章 アダージェット。言わずと知れた、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』(1971)で一躍有名になった音楽だ。

『ベニスに死す』の主人公である作曲家グスタフ・アッシェンバッハはゲイとして描かれており、だから『マエストロ』でも、レニーの弟子(架空の人物)をケイト・ブランシェットが演じる映画『TAR/ター』でもアダージェットが引用されている。

 ・ クラシック通が読み解く映画「TAR/ター」(帝王カラヤン vs. バーンスタインとか) 2023.05.27

ただしグスタフ・マーラー自身はゲイではなく、アダージェットは愛する妻アルマに捧げられた楽曲である。ではクラシック音楽に造詣が深いヴィスコンティは何故主人公をゲイに設定したのか?実は別の明確なモデルがいたのだ。詳しくは下記事に書いた。

 ・ ヴィスコンティ映画「ベニスに死す」の謎 2011.10.18

〈レニーと大植英次の出会い〉

フェリシア・モンテアレグレ・コーン・バーンスタインが亡くなったのが1978年6月16日。大植英次がタングルウッド音楽祭でレニーと出会ったのが1978年の夏(フェスティバル開催期間は例年6月〜7月)。ほぼ同時期である。このとき彼は21歳だった。タングルウッドで大植がピアノを弾いている時に横からやたらと話しかけてくる初老の男がいて、うるさいからと手で追い払おうとしたらその人物がバーンスタイン本人であった、というのが初対面だった。このエピソードは大阪市で開催された演奏会で大植自身が語るのを僕は生で聞いた。

Eiji

〈マーラー『復活』映画で演奏される該当部分の日本語私訳〉

映画の後半でマーラーの交響曲第2番『復活(Auferstehung)』第5楽章フィナーレが演奏される。これは本人がロンドン交響楽団を指揮した映像が残されており、1973年9月にイギリス、ケンブリッジの近くにあるイーリー大聖堂で収録された。イーリー市はロンドンから電車で1時間半、102kmくらいのところにある。ちょうど東京ー熱海間(関西で言えば京都ー舞鶴間)の距離に相当する。僕はDVDを持っており、ドイツ・グラモフォンが2023年に開始した映像配信サービス「ステージプラス」では現在無料配信されている。音楽をすることの歓びを爆発させた、圧巻のパフォーマンスだ。

なお、大植英次が亡くなった朝比奈隆の後任として2003年4月から大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任し、その披露定期演奏会として選んだのがやはりマーラーの『復活』だった。

ブラッドリー・クーパーに指揮の指導をしたメトロポリタン・オペラの音楽監督ネゼ=セガンは同性愛者であることを公表している。パートナーはヴィオラ奏者のピエール・トゥールヴィル。彼が同性愛をカミングアウトする意義についてはこちらの記事が詳しい。レニーのことについても触れられている。

さらにクーパーは2022年2月26日にグスターヴォ・ドゥダメルがベルリン・フィルとマーラーの『復活』を演奏する際にもベルリンに同行し、勉強した。

『復活』のドイツ語歌詞は『マエストロ』の物語と密接にリンクしているのだが、残念ながらNetflixの配信では翻訳されていない。だから参考までに該当部分の対訳を以下添付する(無断転載禁止)。

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合唱・アルト:
Hör’ auf zu beben! 震えるのはやめよ!
Bereite dich zu leben! 生きることに備えよ!

ソプラノ、アルト独唱:
O Schmerz! Du Alldurchdringer! おお苦悩よ!全てを貫くもの!
Dir bin ich entrungen. お前から私は身を振りほどいた
O Tod! Du Allbezwinger! おお死よ!全てを征服するもの!
Nun bist du bezwungen! いまお前は(私に)征服された!
Mit Flügeln, die ich mir errungen, 私が手に入れたこの翼(=“死”)で
In heißem Liebesstreben 熱く愛を希求しながら
Werd’ ich entschweben 私は飛び立とう
Zum Licht, zu dem kein Aug' gedrungen!誰の目にも届かぬ光に向かって

合唱:
Mit Flügeln, die ich mir errungen, 私が手に入れたこの翼(=“死”)で
Werde ich entschweben! 私は飛び立とう
Sterben werd' ich, um zu leben! 私は死のう、生きるために!
Aufersteh'n, ja aufersteh'n wirst du, 復活する、そうだお前は蘇るのだ
Mein Herz, in einem Nu! 私の心、たちどころに!
Was du geschlagen, お前が打倒したもの(=“死”)が
Zu Gott wird es dich tragen! お前を神のもとに導くだろう

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここで問題となるのが最後から2行目の動詞geschlagenの解釈である。これはschlagen(打ち倒す/打ち負かす/〜に勝つ)の過去分詞。ところが、schlagenには(鼓動する/脈を打つ)という意味もあるので、ほとんどの日本語訳はこちらを採用している。多分、その前の行にHerz(心臓)という単語があるので、それに引きずられているのだろう。しかしこれは絶対におかしい。意味を成さない。なぜならこの動詞の主語はdu(君、お前)であり、これは1格。3格のdir(君に)でも4格のdich(君を)でもない。「鼓動する」という意味の場合、次のような例文になる。

Der Puls schlägt unregelmäßig.\脈が不規則に打つ
Mein Herz schlägt heftig.\私の心臓がどきどきしている

つまりPuls(脈)やHerz(心臓)が主語(1格)になっても、duが主語になる筈がない(「私」は脈打たない)。ゆえに「お前がschlagen(打倒す)もの」=「お前がbezwingen(征服する)もの」=「Tod(死)」と読み取れば、全体の意味が通じるのである。

〈カズ・ヒロのメイクに注目!〉

ブラッドリー・クーパーをレナード・バーンスタインに見事に変身させたメイクアップアーティストはカズ・ヒロ(辻一弘)。アカデミー賞で2度メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。特にゲイリー・オールドマンを担当した映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』のメイクは凄かった!

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2023年12月29日 (金)

2023年映画ベスト20+α & 個人賞発表!(2024.01.23更新)

毎年恒例、映画ベストを発表しよう。2023年に劇場で初公開された作品及び、Netflix, Amazon Prime Videoなどインターネットで配信された作品を対象とする。ただし『ザ・クラウン』『メディア王 〜華麗なる一族〜(原題:Succession)』など連続ドラマは除外する。既にレビューを書いたものについてはタイトルをクリックすれば記事に飛べるようリンクを張っている。

 1.TAR/ター
 2.キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(Apple TV+)
 3.怪物
 4.君たちはどう生きるか
 5.マエストロ:その音楽と愛と(Netflix)
 6.ザ・キラー(Netflix)
 7.Saltburn/ソルトバーン(Amazon Prime Video)
 8.ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 
 9.フェイブルマンズ 
 10. SHE SAID/シー・セッド その名を暴け 
 11. イニシェリン島の精霊 
 12. ウーマン・トーキング 私たちの選択 
 13. 別れる決心
 14. レッド・ロケット
 15. バービー 
 16. ウォンカとチョコレート工場のはじまり 
 17. 終わらない週末(Netflix)  
 18. リバー、流れないでよ  
 19. ほつれる  
 20. エンパイア・オブ・ライト
 21. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス   
 22. ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
 23. 市子
 24. インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
 25. マイ・エレメント
 26
. デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム
 27. リトル・マーメイド(実写版)

 監督賞:マーティン・スコセッシ(キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
 アニメーション監督賞:宮崎駿(君たちはどう生きるか
 主演女優賞:ケイト・ブランシェット(TAR/ター
 主演男優賞:ブラッドリー・クーパー(マエストロ:その音楽と愛と)
 助演女優賞:リリー・グラッドストーン(キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
 助演男優賞:ライアン・ゴズリング(バービー)
 オリジナル脚本賞:トッド・フィールドTAR/ター
 脚色賞:エリック・ロス、マーティン・スコセッシ(キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
 撮影賞:ロジャー・ディーキンス(エンパイア・オブ・ライト)
 美術賞:サラ・グリーンウッド(バービー)
 衣装デザイン賞:ジャクリーヌ・デュラン(バービー)
 編集賞:ポール・ロジャーズ(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)
 作曲賞:坂本龍一(怪物)& ジョン・ウィリアムズ(インディ・ジョーンズと運命のダイヤル)
 歌曲賞:米津玄師(『君たちはどう生きるか』より“地球儀”)
 視覚効果賞:白組(ゴジラ-1.0)
 メイクアップ賞:カズ・ヒロ(マエストロ:その音楽と愛と)

 特別賞:杉咲花(『市子』の演技に対して)

『マエストロ:その音楽と愛と』のレビューが間に合わなかったのは痛恨の極み。来年早々に書き上げるつもりなので、乞うご期待!

坂本龍一について、実は『怪物』のためのオリジナル曲は2曲しかないのでインチキかなとも思ったが、遺作だし彼の今までの功績に対して敬意を込めて作曲賞を進呈する。ジョン・ウィリアムズはまだ現役を続けるらしいのだが御年91歳。いつ亡くなってもおかしくないので。今後、新作が出るたびに毎回あげます。あ、でも来年度は『オッペンハイマー』のルドウィグ・ゴランソンに早々と確定。文句なし!

Ichiko

『市子』は観ていて本当に辛い映画だが、杉咲花は凄かった。圧巻。今まで見くびっていました。ごめん。

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2023年12月27日 (水)

KANは「愛は勝つ」の一発屋にあらず。

2023年11月12日にシンガーソングライターのKANが死去した。死因は小腸にできる非常に稀な疾患・メッケル憩室癌(メッケル憩室の発生率が人口の2%でそこにがんができる割合はそのうちのさらに1%前後とされる。日本国内での報告例は数十例程度) 。享年61歳。最近彼の歌を聴いていながったのだが、訃報を聞き少なからず動揺している自分に気が付いた。

僕は数年前Spotifyに加入してから、彼の曲が入っていないか何度か検索したが全くヒットしなかった。松任谷由実、中島みゆきら大物アーティストが次々とサブスクを解禁していく中、残るはKANと山下達郎くらいになっていた。KANの死後、漸く主要な彼の楽曲配信が解禁され始めた。

代表曲『愛は勝つ』のストリーミング配信は2023年12月20日に遂に実現した。1990年9月1日にシングルCDがリリースされオリコンでは8週連続1位にチャートイン、累計売上は201.2万枚を記録した。翌91年に日本レコード大賞を受賞、これでNHK紅白歌合戦出場も果たした。

positive thinkingで能天気な歌詞。今にして思えば『愛は勝つ』はバブル時代(1985年から1991年までの日本で起こった好景気)を象徴する徒花だった。89年の新語・流行語大賞にリゲインのCMのキャッチフレーズ「24時間戦えますか」がランクイン、「お立ち台」で有名なディスコ「ジュリアナ東京」の開業が91年5月15日で、その年末に『愛は勝つ』がレコード大賞を取ったという流れだ。当時の大人たちは浮かれ、のぼせていた。

軽佻浮薄な時代に幼年期を過ごした諫山創(1986年8月29日大分県日田郡大山町生まれ)が、そんなものは「家畜の安寧」「虚偽の繁栄」だ!と叫び、壁を壊して進撃を始めるのが2009年(漫画『進撃の巨人』連載開始)。こうしてバブル期に肩で風を切っていた連中はみな「駆逐」された。今聴いたら『愛は勝つ』の歌詞なんてギャグでしかない。

恐らく、日本人の99%はKANといえば『愛は勝つ』しか知らず、彼のことを“一発屋”だと思っていることだろう。さにあらず。そのことを以下、語っていきたい。

本名は木村 和(きむら かん)、福岡県福岡市生まれ。1987年がレコード・デビューだが、その前年に大林宣彦監督の映画『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群』の音楽を担当。大林とは87年10月に開催された「大連・尾道友港都市博覧会」で上映された短編映画『夢の花 大連幻視行』のサウンドトラックも請け負った。主演は『彼のオートバイ、彼女の島』の原田貴和子と『漂流教室』の浅野愛子。その撮影時にKANも中国・大連に同行したそう(初めての海外旅行)。さらに88年に開催された瀬戸大橋架橋記念博覧会で上映された大林監督『モモとタローのかくれんぼ』も手がけた。

熱狂的な大林映画ファン(フリーク?)である僕はお蔵入りしていた『おかしなふたり』が劇場公開される前、1987年夏に開催された尾道映画祭で先行映された時に観ている。映画祭では大林監督やゲストの淀川長治(映画評論家)・おすぎ(映画評論家)・永六輔(放送作家/作詞家)・薩谷和夫(美術監督)に混じってKANもトークショーに参加していたし(最早おすぎ以外は皆さん故人になってしまった)、野外ステージで彼のミニライブもあったと記憶している。『夢の花 大連幻視行』も尾道で観た。

瀬戸大橋博の『モモとタローのかくれんぼ』の上映方式は特殊で、途中2回物語の分岐点がある。ここで観客が手元にあるボタンでAかBの2つの選択肢を選び多数決で進む方向が定まる。つまり4パターンあるというわけ。僕は10回ほど繰り返しパビリオンに入り、全パターンを制覇した。選択肢で展開が変わるドラマといえばNetflixの『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』(2018)があり、それを30年も先駆ける作品であったと言えるだろう。『夢の花 大連幻視行』も『モモとタローのかくれんぼ』もピアノ主体の美しい楽曲だった。

 ・ 【いつか見た大林映画】第4回 ロケ地巡りと【尾道三部作】外伝

KANの2ndシングル『BRACKET』のミュージック・ビデオも大林が演出した。これがまた、キレッキレの編集でスカッとする傑作なのだが、どうも現在世に出回っていないみたいでとても残念だ。ポリドールとか所属事務所の方、是非もう一度YouTubeとかで観れるようにしてください!

Bracket

またこの頃、大林は『悲劇の季節』という映画を構想しており、そのテーマ曲もKANが作曲し、素晴らしい仕上がりだったと監督がエッセイ本の中で絶賛しているのを読んだ。しかし残念なことにこの企画は実現しなかった。

KANは昔から「フランス人になりたい」という夢を持っていて2002−4年の間、住居をフランス・パリに移し、ピアノを学んだという。さらに九州男児のくせに自身の公式X (Twitter)のプロフィールには「札幌出身・フランス帰り系・英国紳士派」と書いている。えっ、なんで??福岡県出身というのがそんなに恥ずかしいか。西洋かぶれの実に薄っぺらな男である。

ただし、本人の性格と芸術の才能は全く別物だ。音楽の神童モーツァルトが「おなら」とか「うんこ」と言うのが好きな下品な男であったことは良く知られており、映画化もされた戯曲『アマデウス』で描かれた通り。

KANは才能に恵まれた作曲家だったが、作詞のセンスはなかったと僕は思う。恋の歌ばかりでアルバムを一枚通して聴いていると途中で飽きてしまう。つまり金太郎飴。概ね英語交じりで(フランス人になりたかった筈なのになぜ?)、「100カラットの君に/目がくらんだ」とか日本語の表現も陳腐。シンガーソングライターという肩書にこだわらず作詞を他者に委ねていれば、もっとヒット作を生み出せていたのではなかろうか?

ピアノを弾きながら歌うスタイルで、ビリー・ジョエルやエルトン・ジョンのような〈ピアノ・マン〉だった。ただし彼が憧れて歌手になる切っ掛けになったビリー・ジョエルの場合、最初のシングル『ピアノ・マン』にしても『ハートにファイア(We Didn't Start the Fire)』にしても恋の歌ではなく社会性があるわけで、そういう点を見習って欲しかった。

しかし同時にアンビバレントな愛着を彼の音楽に感じるのも確かであり、ここで僕が選ぶKANの歌Best 5を発表する。今は全てサブスクで聴ける(歌に限定しなければ哀しく、心を鷲掴みにする『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群 』がトップだ)。

 1.永遠
 2.小学3年生
 3.BRACKET
 4,東京ライフ
 5.ドラ・ドラ・ドライブ大作戦

『永遠』はKANが創作した最も美しい旋律だろう。胸に沁み入る最高傑作。是非一人でも多くの人にこの曲の魅力を知ってもらいたい。

『小学3年生』はイキったガキの口上が最高に可笑しい。ある意味『愛は勝つ』で調子に乗っていた自己に対するセルフ・パロディである。JazzyでGorgeousなオーケストレーションが良い。ビッグバンド形式で1950年代ニューヨークのフランク・シナトラって感じ。間違いなくシナトラと組んだネルソン・リドルのアレンジを意識している(特に最後)。

『BRACKET』は吠えるホーンセクションが気持ちいい!ノリノリだぜ。

『東京ライフ』の哀しみ、sentimentalismはある意味、KANの音楽の本質であるだろう。

ドラ・ドラ・ドライブ大作戦』は愉快な口調で、バンジョーが入ったりして音楽的には20世紀初頭のディキシーランド・ジャズを彷彿とさせる。映画『ペーパー・ムーン』とか、『俺たちに明日はない』が描いたボニー&クライドの時代の雰囲気。 

ランクインしなかったが『50年後も』は「明日の朝もしも僕が死んでいたら君はどうする?」という歌詞で始まるので、ちょっとドキッとする。

それからKANがアルバムで『キセキ』を発表した後、秦基博が『カサナル』をシングルリリース。2つ混ぜて『カサナルキセキ』に仕上がるという合作の試みは実にユニーク。一聴されたし。

KAN、今までありがとう!安らかにお眠りください。そしていつの日にか作曲家として再評価される日が来ますように。

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