繁昌亭 昼席/桂文三 襲名披露興行

天満天神繁昌亭にて。

20090709115230_edited

  • 桂     三幸/十徳
  • 桂   阿か枝/商売根問
  • 桂      文華/近日息子
  • 内海   英華/女道楽
  • 笑福亭竹林/親子酒
  • 月亭   八方/質屋芝居
  • 口上
  • 桂    春之輔/お玉牛
  • 桂    きん枝/悋気の独楽
  • 桂      文三/青菜

阿か枝さんはそろそろマクラの中身(小学校落語鑑賞会)を替えたほうがいい。もういい加減聴き飽きた。

第3回繁昌亭爆笑賞を受賞された文華さんは緩急を巧みに使い分け、お見事。

三味線を使った英華さんの芸は他では観ることが出来ないもので、とても愉しい。英華さんが復活させた「女道楽」は上方で長く絶えていた演芸だそうである。

八方さんは”しゅっ”とした端正な芸で魅了した。前に聴いた「稽古屋」や「大丸屋騒動」でも感じたことだが、もう客を笑わそうという魂胆などはなく、噺に登場する(長唄とか)歌舞伎の所作をきっちりと伝えることに全神経を注いでおられるようお見受けした。落語に真摯に向かい合う八方さんの姿は素敵だ。

文三さんは調子よく明るい高座で和ませてくれた。

舞台上横一列にずらりと並んだ噺家による襲名披露口上(文華、きん枝、春之輔、文三、八方、文福)も笑いが絶えず、見応えがあった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

笑福亭鶴瓶/映画「ディア・ドクター」(Dear Doctor)

評価:B+

西川美和 原案・脚本・監督。これを西川さん本人が小説化した「きのうの神様」は直木賞候補となった。映画公式サイトはこちら

Dear_doctor

西川監督の前作「ゆれる」(キネマ旬報ベスト・テン第2位)は日本映画史に永遠に記憶されるであろう大傑作であった(映画公開当時の筆者のレビューはこちら)。はっきり言って「ゆれる」に比べると「ディア・ドクター」の質が多少劣ることは否めない。新作には突出したものがなく、オーソドックスな「良い映画」の範疇に収まっている。それは結局本作が、僻地医療や高齢化、尊厳死などの社会問題を扱っているからだろう。そういうジャンルを掘り下げていって導かれる結論は多くはなく、大方予想出来るからである。しかし今年の日本映画を代表する、丁寧に創られた秀作であることに変わりはなく、是非映画館でご覧になることをお勧めしたい。

笑福亭鶴瓶さんの演技が素晴らしい。特にあの、人なつっこい笑顔が印象的。村の人々が「先生、先生」と慕う姿にリアリティが感じられる。

また「ゆれる」のレビューにも書いたことだが、本作では井川遥の登場シーンで彼女の顔の皺とか肌の弛みをわざと強調し、醜く描いているところに、女性監督らしい、同性への容赦ない悪意を感じとても可笑しかった。

八千草薫が、眠れない夜に夫の遺した落語のテープを聴くシーンで(十代目)金原亭馬生「親子酒」と(八代目)三笑亭可楽の「立ち切れ」が流れる。これは鶴瓶さんのアドバイスを受け西川監督が選んだものだそうだ。古いラジカセのスイッチが突然切れるのと、「立ち切れ」の三味線の音が止まるのが一致しているのがお見事。

映画を観る2日前に、鶴瓶さんによる生の高座でその「立ち切れ」を聴いた直後だっただけに、現実と虚構がシンクロして深い感銘を受けた。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

笑福亭鶴瓶「立ち切れ」/きん枝のがっぷり寄席

天満天神繁昌亭で「きん枝のがっぷり寄席」を聴く。

20090706175521_edited

今回のゲストは笑福亭鶴瓶さん。

  • きん枝・鶴瓶/対談
  • 笑福亭 鶴瓶/立ち切れ
  • 桂   きん枝/皿屋敷

対談は(桂)文枝一門と笑福亭の違いについてあれこれと。兄弟弟子が和気藹々とした雰囲気の文枝一門に対して(師匠は生前「兄弟仲良く」といつも言っていたという)、笑福亭は体育会系で上下関係が非常に厳しい。入門が一年早いだけでも直立不動で接しないといけない、等々。十番弟子である鶴瓶さんが亡くなった師匠・松鶴の邸宅を購入し寄席小屋「無学」を作ったときも、一番弟子である仁鶴さんにどう頼んで出演してもらおうかと苦心した話などで盛り上がった(面白いエピソードを色々聞かせてもらったが、「他所へは洩らさないように!」と釘を刺されたのでこれ以上は差し控えたい)。

きん枝さんの高座は、テンポが一定(単調)なのでどうも眠くなる。鶴瓶さんがされた「立ち切れたちぎれ線香)」に絡めたマクラで、桂米團治さんが小米朝時代、雀々さん主催の落語会で「立ち切れ」を高座に掛けた折にやらかした失敗談を披露された。

立ち切れ」は芸妓・小糸(こいと)と船場の若旦那の純愛物語(悲恋)である。上方落語、屈指の大ネタと言われている。線香=芸妓の花代の俗称で、当時は線香一本が燃え尽きる時間を単位とした。

落語「三枚起請」に小山(おやま=女郎)の小輝(こてる)という人物が登場するが、小米朝(当時)さんはそれと「立ち切れ」がごっちゃになり、”小糸”のことを最初に”小輝”と言ってしまった。それではいけないと想ったらしく話の途中で名前が”小糸”に代わり、最後は訳が分からなくなってなって「何で(三味線を)終いまで弾ぃてくれへんねん、”こてと”〜!!」と叫んだそうだ。

また、別の会でのエピソード。

以下、小糸の死後、クライマックスにおける若旦那と御茶屋の女将(小糸の母)との会話。

誰も弾かないのに仏壇から流れてきた三味線の音が「ピン」と急に止む。
「何でや? 三味線の糸が切れたん違うか? ちょっと見て」
「糸は切れてぇ しまへん……(中略)若旦那、もぉ何ぼ言ぅたかて、小糸、三味線弾かしまへんわ」
「何でやねん?」
「お仏壇の線香が、ちょうど立ち切れました」

ここで小米朝さん、言い間違えて「三味線が燃え尽きました」と。下座でお囃子を担当していたかつら枝代さん(枝雀夫人)がこれを聞き、「火事になるがな」と呟いたとか。

この「立ち切れ」は、笑福亭の元祖と言われる松富久亭 松竹(しょうふくてい しょちく)の作だとのこと。しかし現在、笑福亭でこの噺を高座に掛ける人がいないことが鶴瓶さんが取り組む契機になったそうだ。

鶴瓶さんは映画俳優としても活躍しておられるだけに役作りが巧みで、実に味わい深い「立ち切れ」に仕上げられていた。特に話の中盤に登場する番頭の威厳ある態度が絶品だった。

ただ、鶴瓶さんの高座の最中、客席のおばちゃんの携帯電話が派手に二回(しかも同一人物!)鳴ったことは非常に残念であった。マナーが悪いのは大体、年寄りと相場が決まっている。

昨年の「大阪クラシック」でも、演奏中に同様のことが起こった。僕が隣に座っていた張本人に「携帯の電源を切って下さい」と注意すると、そのおばちゃん曰く「切り方が分からないんです」……仕方ないので僕が代わりにOFFにしてあげた。機器の使用法が分からないのなら、最初から携帯を持つな!と言いたい。

20090706175545_edited

落語の前に繁昌亭近くの「亀の池 浪速」で、うな重をいただく。こんがり焼けた鰻はふっくら、サクサク。まことに美味なり。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

続報!のだめカンタービレと飯森範親さん

これは以前書いた記事「のだめカンタービレと飯森範親さん」と併せてお読み下さい。

映画版「のだめカンタービレ」(主演: 玉木宏、上野樹里)のヨーロッパ・ロケが現在、進行中である。この度、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地であるウィーン楽友協会(ムジークフェライン)大ホールでロケが行われた(くわしくはこちら)。楽友協会が映画の撮影で使用されるのは世界で初めてだそうである。演奏されたのはお馴染み、ベートーヴェン/交響曲第7番。楽団員はチェコのプロの交響楽団63人が動員された。何故チェコかというと、物価の関係で安く雇用できるからだと推測される(久石譲さんも「もののけ姫」「ハウルの動く城」などをチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とレコーディングしている)。

これに関連して指揮者の飯森範親さんがブログで意味深なことを書かれている→こちら。調べてみると、映画「のだめカンタービレ」のロケがウィーン楽友協会で行われたのはこの6月28日(日)であることが判明した。飯森さんはスロヴァキアの首都ブラチスラバで行われたロケにも立ち会われたようだ→こちら

ということは、映画版「のだめカンタービレ」では影武者ならぬ影の指揮者として飯森さんのベト7が聴けるということだろう。これは実に愉しみである。飯森さんのことだ、果たして千秋がウィーン楽友協会で振るベートーヴェンはピリオド奏法になるのか!?その際バロック・ティンパニは使用するのか等、興味は尽きない(東欧諸国にはピリオド奏法は浸透していないので、恐らくモダン奏法だろうと想われるが……)。

なお、僕もこのウィーン楽友協会でコンサートを聴いたことが一度だけある。黄金色に輝く、世界で最も美しいホールである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

桂文太@高津の富亭(7/5)

落語「高津の富」「崇徳院」の舞台となった高津神社で「文太の会」を聴く。

20090705131854_edited

  • 桂文太/眼鏡屋盗人(古典)
  • 桂文太/親子茶屋(古典)
  • 桂三四郎/お忘れ物承り所(三枝 作)
  • 桂文太/目良のさいら(贋作)

開口0番で文太さんは、7/1に和歌山県の熊野において師匠である故・桂文枝の創作落語「熊野詣」を口演されたことを話された。師匠の未亡人や、息子さんも聴きに来られたそうだ(→新聞記事はこちら)。

名人・文太師の高座はいつも耳に心地よい。日溜りのようにぽかぽか暖かくて、穏やかな気持ちになれる。《ヒーリング落語》と呼べるかも知れない。体験されたことのない方は、是非一度ご賞味あれ。

20090705140200_edited

| | コメント (0) | トラックバック (0)

月亭八方・立川志の輔/朝日東西名人会

シアター・ドラマシティでの落語会。

20090702221538_edited

  • 三遊亭王楽/やかん
  • 桂     文三/宿替え
  • 立川志の輔/三方一両損
  • 笑福亭三喬/転宅
  • 月亭   八方/大丸屋騒動

宿替え」は引っ越し先に到着したあたりから。文三さんは軽やかな口調で調子よく《徳さん》を演じ、お見事。

僕は志の輔さんの思わせぶりな「間」が大嫌いだけれど、今回はあの人情を押し売りする新作落語ではなく、そここそ愉しめた。特にマクラの小話連発は想わず笑ってしまった。それから、怒りとか哀しみは他者と共感(共鳴)しやすいが、笑いは千差万別で、隣の人が笑っていても何が可笑しいんだかさっぱり理解出来ないということがあるという話にも、うんうんと頷けるものがあった。「悲劇」よりも「喜劇」の方が、実は難しいのである。

三喬さんは十八番の泥棒噺。しかも上方では演じる人が殆どいなくなったという珍しいもの。三喬さんの巧みな話術で聴くと十分面白いのだが……。

大丸屋騒動」は江戸時代に京都で実際起こった殺人事件を元に、講釈・歌舞伎にも取り入れられた後に落語になった噺だそうだ。笑いが少なく陰惨な内容だが、八方さんは緊張と緩和をバランス良く配しながら、一瞬たりとも聴衆を飽きさせることなく演じ切った。是非今度は八方さんが最も得意とされていると耳にする「算段の平兵衛」を聴いてみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

井上道義/大フィル「夏の夜のメンデルスゾーン」

いずみホールで大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)によるメンデルスゾーン生誕200周年記念/特別演奏会を聴く。会場はほぼ満席。

指揮はミッキーこと、井上道義さん(→愛称に関して本人の弁)。先日、井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢が演奏するベートーヴェンの第七シンフォニーをBSで視聴していたら、バロック・ティンパニを使用したピリオド奏法だったので驚愕した。ミッキー、いつの間にスタイルを変えたんだ!?以前、大フィルと組んだ第九を聴いた時は通常のモダン奏法だったのに……。そういう風に非常に柔軟な考えを持ったマエストロである。

Inoue

  • メンデルスゾーン/演奏会用序曲「真夏の夜の夢」
  • メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
  • メンデルスゾーン/劇音楽「真夏の夜の夢」

ヴァイオリン協奏曲に登場したのは韓国生まれのシン・ヒョンスさん。彼女は2008年にロン・ティボー国際コンクールで優勝している。同コンクールで優勝した日本人には、つい先日ベルリン・フィル第1コンサートマスターに内定した樫本大進さん(1996年)、そして史上最年少の16歳で優勝した山田晃子さん(2002年)がいる。また韓国は優れた弦楽奏者たちを輩出しており、その代表がチョン・キョンファ(指揮者・ピアニストとして名高いチョン・ミュンフンの姉)であろう。

僕は大阪シンフォニカーの定期で聴いた山田晃子さんの演奏の方が好きだが(そのコンサートのレビューはこちら)、ヒョンスさんも好演だった。各小節の区切りが明確であり、歯切れの良い演奏と言えるだろう。ただ欲を言うならば、山田さんのようにもっとエレガントであるとか、神尾真由子さんのように力強く情熱的であるとかといった特徴が欲しかった。これからどのようなバイオリニストになろうと目指しているのか、その方向性が見えてこない。

ミッキーの指揮は彼女に寄り添うだけではなく、挑みかかるような攻めの姿勢、自己主張もあり、なかなかスリリングで面白かった。

20090703210439_edited

真夏の夜の夢」は序曲と劇音楽が切り離されて演奏されたが、実は序曲が作曲されたのはメンデルスゾーンが17歳で、劇音楽の方は34歳のときに初演されている。

また、シェイクスピアの戯曲A Midsummer Night's DreamのMidsummer Nightとは本来、「夏至祭(6/24)」前夜のことだそうだ。日本の夏の夜は真っ暗闇になるのでお化けが出るが、緯度の高い北ヨーロッパでは夏至の夜も薄明かりが続くから妖精が現れるのだと、語り部の朝岡 聡さん(元・テレビ朝日アナウンサー)が解説された。ちなみに朝岡さんはリコーダー歴30年という古楽ファン。鈴木秀美/オーケストラ・リベラ・クラシカの熱心なサポーターでもある(→朝岡さんのブログへ)。

ミッキーの指揮は軽妙なテンポ感で、弾力とダイナミクス(強弱変化)に富み、まこと申し分のないものであった。演奏会用序曲では冒頭、管楽器が奏でるおっとりして夢見るような和音に続き、悪戯好きの妖精たちがこちょまか飛び回る様子を弦楽器が躍動的に描き、そのコントラストが鮮やか!大フィルのアンサンブルもさすがで、特に序曲終結部、ノン・ビブラートで奏でる弦の音色がとても美しかった。さらに、マイクを握ったミッキー朝岡さんの息の合ったやりとりも愉しかった(今回の台本はミッキー自身の手によるもの)。

照明を落として雰囲気作りをしたり、衣装をまとった2人のソプラノ(天羽明恵松田奈緒美)と大阪フィルハーモニー合唱団(女性のみ)による小芝居もあり。学芸会的でほのぼのとした温もりがあり、素敵な夏の夜の夢を見させてもらった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」TV放送に寄せて