「君の名は。」IMAX(次世代レーザー)体験記

新海誠監督「君の名は。」が2週間限定でIMAX上映されることになり、その初日に109シネマズ大阪エキスポシティに観に行った。

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予告編で「ラ・ラ・ランド」が流れた。日本でもIMAXシアターで上映するんだ!ときめいた。

横幅26m、高さ18mという巨大スクリーンに4Kで映し出される「君の名は。」の映像は、とにかく没入感がヤバかった!特に圧倒されたのはユキちゃん先生(花澤香菜)が古文の授業で万葉集を教える場面。チョークを黒板に押し当てた時に粉が飛び散るのが鮮明に見えたのだ。びっくりした。

12.1chサラウンドの音響も極上。今まで聞こえなかった効果音もバッチリ。

ただちょっと残念だったのは今回のIMAX版で彗星の軌道の作画ミス(2回目のニュース映像から)が修正されているかも?と期待したのだが、そのままだった。以前プロデューサーの古澤佳寛さんにツイッターで質問したら、修正予定ですとご返事を頂いたのだが、DVD/Blu-ray発売時などまだ先の話みたい。

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夢と狂気のミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」

ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」(公式サイト→こちら)はゴールデン・グローブ受賞で史上最多の7部門(ミュージカル作品賞・主演男優賞・主演女優賞・監督賞・脚本賞・作曲賞・歌曲賞)を受賞した。アカデミー賞でも作品・監督賞で「ムーンライト」と一騎打ちの模様となっている(作曲・歌曲賞受賞は300%確実)。

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ミシェル・ルグランが作曲した映画「ロシュフォールの恋人たち」(ジャック・ドゥミ監督)の音楽を彷彿とさせる冒頭のナンバー"Another Day of Sun"(歌詞付き試聴はこちら)にはinsaneという言葉が用いられ、後半の"Audition"(歌詞付き試聴はこちら)ではmadnesscrazyが登場する。これらはすべて日本語で狂気を意味する。ついでながら最高に可笑しかったゴールデン・グローブ賞授賞式オープニングに於ける「ラ・ラ・ランド」のパロディをご紹介しよう→こちら

映画スターを目指してオーディションに落ちまくりながら映画スタジオのカフェで働くミア(エマ・ストーン)は"Audition"で「些かの狂気が新たな色彩を見出すための重要な鍵よ。それは私達をどこへ連れて行ってくれるか判らないけれど、でもだからこそ必要なものなの」と歌う。夢と狂気ーこれが「ラ・ラ・ランド」の肝(きも)である。

そもそもLa La LandのLAはハリウッドのあるロサンゼルス(Los Angeles)のことを指し、【あっちの世界/あの世/我を忘れた陶酔境】を意味する言葉である(こちらのブログを参照のこと)。

"Another Day of Sun"の最後は何かに取り憑かれたように「たとえ(オーディションに落ちて)失望させられたとしても、次の朝には必ずまた日が昇る」と合唱が執拗に繰り返す。正に狂気が疾走するのだ!

僕はこの歌を聴きながら、あるアイドルの発言を想い出した。

高橋みなみはAKB48選抜総選挙のスピーチで「努力は必ず報われる。私の人生を持って証明してみせます!」と言い、物議を醸した。

AKB48のオープニングメンバーオーディションの応募総数は7924名、最終合格者は20名だった。競争倍率は396倍。つまり高橋みなみにとって「努力は必ず報われる」は真実であったが、彼女1人に対してその影で395人が涙をのんだことになり、この金言が当てはまるのはたった0.25%に過ぎない。さらに最終合格者のうち、シングルの選抜メンバーに選ばれたのはごく一握りであり、「努力が報われた」女の子はさらにさらに少なくなる。

オリンピックの金メダリストも同じようなことを言ったりするが、それこそオリンピックで金メダルを受賞できる確率は天文学的に少ないだろう。では日本代表に選ばれなかったアスリートたちは努力を怠っていたのか?そんな筈はない。

つまり「努力は必ず報われる」のは勝者の理論であり、生まれ持った資質や運を持たぬ我々大半の人間にとって、決して真理ではないのである。

脚本家・山田太一がいいことを言っている→「頑張れば夢はかなう」というのは幻想、傲慢(日経ビジネス アソシエ)

を持つことは自由であり、誰しも有する権利である。しかしの実現に向けてその光(Stars)を追い続けるには狂気が必要であり、凡人は諦めが肝心だ。そのことを「ラ・ラ・ランド」は私たちに語りかけてくるのである。

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ミュージカル「ミス・サイゴン」 2017

1月1日(元旦)と7日(土)に梅田芸術劇場で「ミス・サイゴン」を観劇した。過去の観劇歴や作品紹介、新旧演出の違いについては下記事に詳しく書いたのでご参照あれ。

結局1992年帝劇初演以降、トータルでこのミュージカルを9回観たことになる。長年の付き合いなので、亡くなった関係者たちのことを観劇中に想うことが多くなった。キム役で渾身の演技を見せた本田美奈子、そして美しい日本語訳を紡いだ岩谷時子……。

さて元旦のキャストは、

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7日のキャストは、

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初演以来エンジニアを演じ続けてきた市村正親が今回でファイナルと銘打たれているのだが、ファンは誰も信じていない。宮﨑駿みたいな「引退詐欺」だと皆知っている。非難じゃないよ、許容して「またか」と温かい目で見守っているのだ。

市村には前科がある。2009年の「ラ・カージュ・オ・フォール」は【市村ザザ、ファイナルステージ!】とポスターに銘打たれていた→証拠写真はこちら。しかしその後も市村は「ラ・カージュ」の舞台に立ち続けている。

案の定、元旦公演で市村は「今回が最後ということになっているのですが(客席から笑い)、演ってみるとまだまだ行けそうだなと感じました(客席拍手)。再び皆様の前にエンジニアとして舞台に立つことが私の夢となりました」と挨拶した。お約束の展開である。

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いやもう、いっちゃん以外のエンジニアは考えられないから。命の続く限り演ってください。

キムは笹本玲奈が一番好き。彼女は強い感情を歌に乗せることが出来る。凄みがある。

キム・スハは初めて。彼女の日本語は問題なかった。感情表現では笹本が一枚上手だが、非常に弱音が美しい歌い方をする。どんなプロフィールなのか調べてみて仰天した。なんと本場ロンドンの「ミス・サイゴン」でもキム役を演じたそうである。韓国人としてウエストエンドで主役(ファーストカバー)を務めるのは史上初なのだとか(彼女のインタビュー記事はこちら)。2015年2月に日本で「ミス・サイゴン」のオーディションを受けた後、韓国に戻るとイギリス側から「ウェストエンドの同役に挑戦してみないか」との誘いがあったのだそう。

ジジ役の中野加奈子もウエストエンドで同役を務めたということで、圧巻の歌唱だった。

久しぶりにこの作品に接して、エンジニアはトリックスターの役割を担っているんだなと初めて理解した。トリックスターとは神話や伝説などで語られるいたずら者。その思いがけない働きによって旧秩序が破壊され、新しい創造が生じるきっかけとなることがある。しかし単なる破壊者として終わることもある。ギリシャ神話のプロメテウス、古事記のスサノオ、シェイクスピア「夏の夜の夢」の妖精パックがその代表例である。エンジニアはベトナム(アジア/仏教徒)とアメリカ(欧米諸国/キリスト教徒)を繋ぐ役割を果たす。そもそも彼はフランス人とベトナム人の混血であり、考えてみればキムとクリスの息子タムと似たような境遇であることは興味深い。一方、ミュージカル「エビータ」のチェや「エリザベート」のルキーニ、「キャバレー」のM.C.はあくまで司会進行役/狂言回しであり、トリックスターではない。しかし「ジーザス・クライスト・スーパースター」に登場するイスカリオテのユダはトリックスターだよね。だって彼の裏切りがあって初めて物語は完結し、キリスト教が創造されるのだから。

元旦公演は出演者によるステージ上での鏡開きと、その後ロビーでの振舞い酒があった。

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珠城りょう主演 宝塚月組「グランドホテル」「カルーセル輪舞曲(ロンド)」

1月2日、宝塚大劇場へ。ブロードウェイ・ミュージカル「グランドホテル」は実に24年ぶりの再演である。

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1993年月組版/2017年月組版の主要キャストを下記に示す。

  • オットー:涼風真世/美弥るりか
  • フラムシェン:麻乃佳世/早乙女 わかば(役替わり)
  • ラファエラ:天海祐希/暁 千星(役替わり)
  • フェリックス男爵:久世星佳/珠城りょう
  • グルーシンスカヤ:羽根知里/愛希れいか

太字が当時/現在のトップ男役&娘役である。

涼風真世のサヨナラ公演がどうして不評だったのかは下記事に解説した。

本作は後世に「グランドホテル形式」というジャンルを形成した元祖であり、その本質は「主役不在の群像劇」である。それを宝塚歌劇バージョンとしてトップ男役と娘役を目立たせようというのはそもそも無理がある。しかし初演版の「余命幾ばくもないユダヤ人会計士」オットーよりは、「借金まみれのジゴロ」フェリックス男爵を主役に据える方がよほどしっくり来る。故に今回の潤色/改変は大成功と言えるだろう。

また昨年観たトム・サザーランド演出版は舞台装置が地味で、「ベルリンの超一流ホテル」というゴージャスな雰囲気が皆無だった。ところが宝塚版は人数が多いし華やかで申し分なし。オリジナル演出・振付のトミー・チューンは今回、「特別監修」ということでどこまでが彼の功績か不明だが(宝塚版の演出は岡田敬二、生田大和)時にギリシャ古代劇場の観客のような役割も果たす群舞の扱いが卓越していた。映画も何回も観たし十分知っているお話なのに、最後はジーンと感動した。是非また観たい!

出演者で突出して良かったのが愛希れいか。兎に角、踊れる娘役なのでロシアのバレリーナという設定がピッタリ。正にはまり役である。

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レビューの「カルーセル輪舞曲(ロンド)」についてだが、【モン・パリ誕生90周年】と銘打ちながら、「どこがパリやねん!」とズッコケた。フランスの雰囲気が皆無。ニューヨーク、メキシコ、ブラジル、砂漠(シルクロード)と巡り、「80日間世界一周」というタイトルこそ相応しいのではないかと想った(実際にビクター・ヤングが作曲した同名曲が使用されている)。特に娘役にブラジルの国旗を振らせるダサい演出は一体何事??トップ・スターが背負う緑色の蛾みたいな羽も気持ち悪い。あと冒頭から登場する回転木馬が全く生かされていない。「回るよ回る、世界は回る」という意味だけ?それじゃあ幼稚園のお遊戯会レベルだ。稲葉大地、全然ダメやん!もっとロジャース&ハマースタイン IIのコンビが「回転木馬(Carousel)」に込めた寓意を真剣に勉強すべきだ。

宝塚史上、下から数えた方が早いお粗末なショーだった。こんなもの観せられるくらいなら、「グランドホテル」初演の時にトミー・チューンが演出した「BROADWAY BOYS」の再演を観たかった。

珠城りょうについて。ファンの人には申し訳ないのだが、僕には「おばさん顔」に見える。格好いいとも想わないし好みじゃない。歌については龍真咲レベル?つまり大したことない。現在の月組の問題点は「オッ、これは!」と耳をそばだてるような美声の男役が(2,3,4番手にも)いないということだ。結局、一番光り輝いているのは娘役の愛希れいかであり、歌劇団としてはそんなんでええのん?

最後に。ブロードウェイ・ミュージカルということもあり1993年月組版は一切映像記録が残っていないのだが、2017年版はDVD/Blu-rayがちゃんと発売できるよう、ややこしい版権問題をクリアしたのだろうか?

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ジャック・ドゥミ「港町三部作」から聖林ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」へ

今年度アカデミー作品賞・監督賞の有力候補であり、作曲賞・歌曲賞の受賞はほぼ100%間違いない映画「ラ・ラ・ランド」はMGMミュージカルの黄金期「踊るニュウ・ヨーク」(1940)、「巴里のアメリカ人」(51)、「雨に唄えば」(52)、「バンド・ワゴン」(53)やボブ・フォッシー監督の「スウィート・チャリティ」(69)を彷彿とさせる仕上がりであり(公式サイトの予告編を観れば一目瞭然)、そして何よりジャック・ドゥミ監督のフランス映画「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」へのオマージュとなっている。音楽そのものも、もうイントロを聴いただけで、ミシェル・ルグランが作曲した「ロシュフォールの恋人たち」への熱烈なラヴ・レターであることは火を見るより明らかだ(特に”キャラバンの到着”)。

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ジャック・ドゥミは港町ナント(現在は「熱狂の日」音楽祭=ラ・フォル・ジュルネ発祥の地として有名)で幼少期を過ごした。その頃の様子は後にドゥミと結婚した映画監督アニエス・ヴァルダ(「幸福」でベルリン国際映画祭銀熊賞)が「ジャック・ドゥミの少年期」(1991)で生き生きと描いている。

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ドゥミとヴァルダ、そしてアラン・レネは(セーヌ川の)左岸派と呼ばれ(対する映画批評家出身のトリュフォー、ゴダール、ロメールらはカイエ派/右岸派)、ドゥミの長編映画デビュー作「ローラ」は「ヌーヴェルヴァーグ(=新しい波)の真珠」と讃えられた。

ふたりは一男一女をもうけた。ドゥミは1990年に59歳で亡くなり、死因は白血病と発表された。しかし2008年になってヴァルダはドキュメンタリー映画「アニエスの浜辺」で実はAIDSで亡くなったのだったと告白した。ということはドゥミはバイセクシャルであり、50歳を過ぎても男の恋人(あるいは男娼)と関係があったことを意味している。それでもアニエスが心の底からドゥミを愛していたことは「ジャック・ドゥミの少年期」を観れば判る。まこと愛とは計り知れないものである(ミュージカル「コーラスライン」の演出・振付をしたマイケル・ベネットは87年、映画「愛と悲しみのボレロ」で有名なダンサーのジョルジュ・ドンは92年にやはりAIDSで亡くなった。この病気をテーマにし、トム・ハンクスがアカデミー賞主演男優賞を受賞した映画「フィラデルフィア」が公開されるのは93年である)。

ナントを舞台にした「ローラ」(1961)は白黒でミュージカルではない(ドゥミはカラーのミュージカル映画として撮りたかったのだが、予算が足りなかった)。しかしカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した総天然色映画「シェルブールの雨傘」(1964)は明白な「ローラ」の続編である。踊り子ローラに恋する主人公ローラン・カサールが失恋しナントの街を去る場面で「ローラ」は終わる。そして「シェルブールの雨傘」でカサールは宝石商として登場、どちらもマルク・ミシェルが演じている。ミシェル・ルグランは「ローラ」から音楽を担当しており、「ローラ」に於けるカサールのテーマが、そのまま「シェルブール」でも使用されている。で「シェルブール」でカサールがローラのことを歌う回想シーンでナントの街並みが映し出されるのだが、「シェルブール」が公開された64年当時「ローラ」は日本未公開で、日本の観客にはチンプンカンプンだったろう(日本初公開は92年)。現在はアニエス・ヴァルダが監修し2012年に完成した「ローラ」デジタル完全修復版がDVD,Blu-rayで容易に入手出来る。

「シェルブール」が画期的だったのは全篇が歌で構成されており、通常のダイアログは皆無であること。ハリウッドのミュージカル映画やブロードウェイ・ミュージカルでは前例がない手法だ。「シェルブール」の後にヨーロッパでは「レ・ミゼラブル」や「エリザベート」「ロミオ&ジュリエット」など同様のスタイルの舞台ミュージカルが生まれた。

「ローラ」「シェルブールの雨傘」そして「ロシュフォールの恋人たち」(1967)は港町三部作と呼ばれており、3作品ともに水兵が街を歩いている風景が映し出される。また「ロシュフォールの恋人たち」でカフェの常連客である老紳士はパリのフォリー・ベルジェールの売れっ子ダンサーだった60歳のローラに40年間恋し続け、遂には切り刻んで殺してしまうというエピソードがある(以上は新聞記事として語られる)。ゆえにこれらをローラ三部作と呼ぶ人もいるのだが、ここでややこしいのがドゥミがベトナム戦争下のアメリカで撮った「モデル・ショップ」(1968)という作品があり、ここでも「ローラ」のアヌーク・エーメがローラを演じている(日本初公開は2007年)。故にローラ四部作??但し、残念なことに「モデル・ショップ」のみ音楽がミシェル・ルグランではなく、ドゥミは「モデル・ショップ」を失敗作と認めている。

「シェルブールの雨傘」でカトリーヌ・ドヌーヴの歌の吹き替えをしているのがダニエル・リカーリ、「ロシュフォールの恋人たち」で吹き替えしているのがア・カペラ・ヴォーカル・グループ「ザ・スウィングル・シンガーズ」のメンバー、アンヌ・ジェルマン。つまり両者でドヌーヴの歌声が違うわけで、その辺は緩い。因みに「ザ・スウィングル・シンガーズ」にはミシェル・ルグランの姉クリスチャンヌもいて、やはり「ロシュフォールの恋人たち」サントラで歌っている。またドゥミの作品にはハリウッド映画への憧れが濃密で、「ロシュフォールの恋人たち」には「雨に唄えば」「巴里のアメリカ人」のジーン・ケリーや「ウエストサイド物語」のジョージ・チャキリスが出演している。

余談だが「ロシュフォールの恋人たち」でドヌーヴと共演した姉フランソワーズ・ドルレアックはこの映画が公開された年、別の映画の追加撮影の為ニース空港に向かう運転中に高速道路のカーブを曲がり切れず激突、車は横転、炎上した。享年25歳だった。

「シェルブール」と「ロシュフォール」で個性的なのはCandy Colorsと評される鮮やかなである。と言い換えることも出来る。ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの象徴となっているレインボーフラッグを彷彿とさせる。そしてそのは「ラ・ラ・ランド」にも受け継がれている。

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2016年を振り返って

2016年を回顧して、僕が今年を1文字の漢字で表すなら「」以外にないなと想う。

これは「将来の夢」とか、キング牧師の有名な演説"I have a dream"の夢(=希望・願望)ではなく、文字通り夜見るのことである。

何と言っても臨床心理学(ユング派)の権威・河合隼雄と、新海誠監督「君の名は。」の出会いが大きかった。この両者を結びつけるのがであり、言い換えるなら無意識潜在意識/深層心理ということになるだろう。

そもそも河合隼雄の名を知った切っ掛けが今年7月、佐渡裕プロデュースで兵庫県立芸術文化センターで上演されたブリテンのオペラ「夏の夜の」の予習として読んだ対談本「快読シェイクスピア」(ちくま文庫)だった。詳しくは下記事に書いた。

漸く人生の師MasterMentorに出会った!という確かな手応え。それから河合の著書を貪るように読んだ。年末までに27冊。過去にこれだけ集中して読んだのは、ちょっと記憶にない。

河合と「君の名は。」の”結び”はだけではない。新海誠監督は第2弾パンフレットの中で僕の質問に答え、村上春樹の短編小説「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」が「君の名は。」の発想の原点となったことを認めており、奥寺先輩の台詞には村上の「ノルウェイの森」からの引用がある。そして河合は数回に渡り村上と対談をしているのである(「こころの声を聴くー河合隼雄対話集」「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」いずれも新潮文庫)。

また河合はイザナギ・イザナミが登場する日本神話(古事記)や平安時代の「とりかへばや物語」について本を書いており、これらは「君の名は。」の土台となっている。

僕が同時期に河合隼雄と「君の名は。」にめぐり逢ったのも、正にユングが言うところのシンクロニシティ意味のある偶然の一致)なのであろう。

つい先日「君の名は。」について川村元気プロデューサーが集合的無意識の話をしている→こちら集合的無意識とはユング心理学の用語である。みんな繋がっている。僕も映画公開直後、9月の時点で集合的無意識という観点から「君の名は。」を論じた。

夢はその人の潜在意識の現れである。意識(その中心に自我+潜在意識=自己(self)。僕は今年から「夢日記」を書き始めた。2016年は人生の大きな転機となった。

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桂文三 三番勝負 ー其の壱ー 柳家喬太郎の巻

12月27日(火)天満天神繁昌亭へ。

  • 桂三語:手水廻し
  • 桂文三:時うどん
  • 柳家喬太郎:ウルトラ仲蔵
     中入
  • 桂文三:三枚起請

約5割が女性客。

「時うどん」は文三の鉄板ネタで、声が高い喜六がとにかく陽気。後うどんを食べる時の擬音が上手い。

喬太郎は登場するやいなや、「今日の髪型、ドナルド・トランプに似てるでしょ?」で場内爆笑。文三からのリクエストという「ウルトラ仲蔵」はハードルの高い新作落語。江戸の人情噺「中村仲蔵」をベースに、ウルトラ兄弟やウルトラの怪獣たちで描く。上方の客は「中村仲蔵」を知らない人が多いし、ウルトラマンを観たことがない人にはチンプンカンプンでイメージすら湧かないだろう。僕は幸い、5歳の息子と一緒に「ウルトラQ」「(初代)ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」を全話レンタルDVDで観ていたので、十分愉しめた。

ケムール人やバルタン星人、大阪城を破壊したゴモラなどが暴れまわる。ウルトラマンキングには鼻がないという小ネタあり。喬太郎のDVD「ウルトラマン落語」にも収録されていないので、これは貴重な体験だった。

そもそもウルトラマンが大好きで意気投合した喬太郎と文三。新春の新聞に文三は「ウルトラマニア芸人」として登場するそう。

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2016年 映画ベスト 30 +α

対象となるのは今年日本で初めて劇場公開された作品である。なお、映画賞やベストテンを賑わせている、「湯を沸かすほどの熱い愛」「淵に立つ」は残念ながら未見。またデンマーク/ドイツ映画「ヒトラーの贈り物」を観てから選出しようと目論んでいたのだが、大阪では12/31大晦日からの公開(!!)で、神戸では1/21からと判明したので断念した。来年に回す。

映画タイトルをクリックすると各々のレビューに飛ぶ。

  1. 君の名は。
  2. シン・ゴジラ
  3. ソング・オブ・ザ・シー 海の歌
  4. 劇場版 響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部にようこそ〜
  5. サウルの息子
  6. ルーム
  7. ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
  8. この世界の片隅に
  9. レヴェナント:蘇えりし者
  10. スポットライト 世紀のスクープ
  11. FAKE
  12. ブリッジ・オブ・スパイ
  13. スティーブ・ジョブズ
  14. マジカル・ガール
  15. エクス・マキナ
  16. ハドソン川の奇跡
  17. ブルックリン
  18. シング・ストリート 未来の歌
  19. リップヴァンウィンクルの花嫁
  20. 怒り
  21. オーバー・フェンス
  22. リリーのすべて
  23. ザ・ウォーク
  24. キャロル
  25. ジャングル・ブック
  26. 海よりもまだ深く
  27. ズートピア
  28. ヘイトフル・エイト
  29. ちはやふるー上の句・下の句ー
  30. トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
  31. クリムゾン・ピーク
  32. 永い言い訳
  33. ピートと秘密の友達

今年は日本映画が元気で、特にアニメーションの充実度が半端なかった。どうか「君の名は。」が米アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされますように!……僕はどうもアメリカの配給会社Funnimation Filmsの宣伝戦略に疑問を感じていて、不信感がどんどん募って仕方がないんだよね。

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ピートと秘密の友達

評価:B+

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ディズニー映画「ピートとドラゴン」(1977年、日本未公開)のリメイクである。実写とアニメを融合した映画で、ドラゴンのみアニメだったという。

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「ピートとドラゴン」が北米で公開されたのは「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」と同じ年で、ディズニー・スタジオはどん底の状態だった。ジョン・ラセターがディズニーに入社するのは1979年、同じ頃、ブラッド・バード(アイアン・ジャイアント、Mr.インクレディブル、レミーのおいしいレストラン)も入社するが、程なくボスと対立して去り、やがてラセターも解雇される。

一般的にドラゴンは爬虫類であり、肌はつるつるというイメージだが(オリジナルのセル画もそう)、「ピートと秘密の友達」のドラゴンは体中に毛が生えたもふもふ系(英語で表現すればfurry)で、僕は「ネバー・エンディング・ストーリー」を想い出した。

Neverendingstory

プロットとしてはスピルバーグの「E.T.」やバードの「アイアン・ジャイアント」と似通っていて新鮮味がないが、人間ドラマが充実しており(ロバート・レッドフォードも登場)、質が高い作品に仕上がっている。CGの出来は悪くないが、実写版「ジャングル・ブック」の後だから分が悪い。

僕は5歳の息子と鑑賞したが、子供向き映画として推薦したい。

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大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 サンタコンサート 2016 & 全日本吹奏楽コンクール「ポーギーとベス」の感想

12月17日(土)、5歳の息子を連れて大阪ビジネスパーク TWIN21アトリウムへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のサンタコンサートを聴く。指揮は梅田隆司先生。

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まず最初にマーチングのパフォーマンスあり。

  • 歌劇「アイーダ」凱旋行進曲
  • 映画「スター・ウォーズ」メドレー
  • ミュージカル「キャッツ」メドレー

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続いて座奏に移り、子ども向けのコンサートが始まる。

  • ジングル・ベル
  • 映画「ライオンキング」メドレー
  • 映画「となりのトトロ」さんぽ、となりのトトロ
  • 映画「ハウルの動く城」世界の約束
  • 魔法使いプリキュア!
  • 動物戦隊ジュウオウジャー
  • 赤鼻のトナカイ

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すでに息子には大阪四季劇場でミュージカル「ライオンキング」と「キャッツ」を観せているので、今回はすごく興味を持って目をキラキラさせながら聴いていた。この日は他にキッズプラザ大阪(コーイチシェフのスイーツ工房に参加)とか公園にも行ったのだが、「みんな愉しかった!」とご機嫌だった。

さて、大阪桐蔭は今年、全日本吹奏楽コンクールで5年ぶりに金賞に輝いた(前回は2011年、自由曲はワーグナーの楽劇「ワルキューレ」)。僕は2016年度の金賞団体を集めたBlu-ray Discで鑑賞した。心が震えるくらい素晴らしかった!

銀賞に終わった2014年の自由曲「キャンディード」や2015年の「蝶々夫人」を聴いたときは「何か違う」と喉に骨が引っかかったような想いを最後まで払拭出来なかった。硬いというか萎縮しているというか……。僕は原曲であるミュージカル「キャンディード」やオペラ「蝶々夫人」の舞台を観ているのだが、桐蔭の演奏から元々の歌("Make Our Garden Grow"や”ある晴れた日に”)を残念ながら連想出来なかった。曲(アレンジ)が吹奏楽に合っていなかったというのもあるだろう。

しかし今年の自由曲ガーシュウィンの歌劇「ポーギーとベス」(建部知弘・森田拓夢 編)は水を得た魚という表現がピッタリで、見違えるようだった。まずサウンドが垢抜けている(英語で言えばsophisticated)。スポーンと抜けるような青空が眼前に広がるのだ。また”サマータイム”のフリューゲルホルンや、”いつもそうとは限らない(It Ain't Necessarily So)”のトロンボーン・ソロはアンニュイな(気怠い)感じが凄く出ていて、「これぞブルース!」と快哉を叫びたくなった。そこには伸びやかな歌があった(実際に練習時に歌ったのでは?)。現在の桐蔭はストコフスキーやオーマンディ時代の「フィラデルフィア・サウンド」に一番近いのではないかとすら感じられた。これだけ洗練されたジャズの音が出せるのなら、ミシェル・ルグランが作曲したミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」の音楽(特に”キャラバンの到着”!)なんか、最高に似合っているんじゃないだろうか?(視聴はこちら)因みにこの曲は宮川彬良の卓越した吹奏楽アレンジがある。また今度のアカデミー賞で歌曲賞と作曲賞を受賞するのは100%間違いない、ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」の音楽(作曲は「セッション」のジャスティン・フルビッツ)も将来是非、大阪桐蔭の演奏で聴いてみたいと、ここで熱くリクエストしておく(公式サイトはこちら、お洒落なこちらのミュージック・クリップもどうぞ)。イントロを聴いた瞬間に判る、「ロシュフォールの恋人たち」への鮮烈なオマージュだ(でも、ちっとも模倣じゃない)。閑話休題。

コンクールの話題に戻るが、桐蔭が選んだ課題曲はIII:「ある英雄の記憶 」(西村友)。ゲーム(RPG)とか大河ドラマの音楽を彷彿とさせる。こちらも非常に物語性が感じられる充実した演奏だった。

2月に開催される定期演奏会で「ポーギーとベス」が演奏される筈なので、生で聴けるのが今からもの凄く愉しみだ。

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